そんな芸能事務所のリスクは、少数のタレントに売上を依存していることだ。上場2社はどちらも、有価証券報告書の「事業等のリスク」という欄でそれを明記している。
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※アミューズの有価証券報告書より
アミューズの場合は、上位3アーティストに「収入の40~50%を依存している」とまで書いてある。実に150億円以上を3グループだけで毎年、稼いでいる計算になる。何百人ものタレント・アーティストを所属させておいて競わせ、そのうちのほんの1%でも当たる兆しがあれば重点的に後押しをし、見事大成すれば会社としてはやっていけるというわけだ。
ゲーム業界とほぼ同じ構造だが、ゲームの場合はたとえヒットさせられなくてもクリエイターやプロデューサーはその経験を活かし、次のプロジェクトに移れる。事務所のマネージャーも同じ立場だが、大半を占めるはずの「ヒットさせられなかったタレント」の行く末はどうなるのか。なかなか大変な業界である。
ともかく、この仕組みなら会社の抱える正社員も少なくて済む。実際、芸能事務所の社員1人あたりの売上高は高く、アミューズは約1.5億円、エイベックスは1.1億円で、2社とも製造業大手並みだ。
だからこそ、「事務所の顔」の脱退やイメージダウン、活動停止は経営を揺るがしかねない。「ゲス不倫」で一時活動休止に追い込まれたベッキーが所属するサンミュージック(非上場)は、その件が原因で一気に倒産危機とまで噂された。
アミューズも予定されていたサザンオールスターズのライブができなかったことを理由に、最新決算では減益した。同社の株価を見ると昨年末から低下傾向で、福山雅治の結婚もじわじわ効いてきているように見える。
タレントの高齢化も深刻な問題だ。桑田佳祐は38年間、福山雅治は28年間もアミューズに所属している。看板タレントが健在なうちに、次に長期的に売り出せる人材を発掘できるかに同社の命運はかかっている。