中国映画界で起きている“日本映画バブル”その理由を探る

ウケているのは「中国人にない発想」

 事実、中国の映画興行収入記録は年々更新を続けており、今年公開された『美人魚』は540億円以上と、’15年に公開され過去最高といわれた『モンスターハント』の約381億円を軽々と超えた。こうした活況は製造業、不動産に続く中国第三のバブルとまで呼ばれるが、問題となるのがコンテンツ力なのだという。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=105390

年々、中国の観客動員数が増加中。このペースでは’17年にはアメリカを抜くことが確実視されている(出典:アメリカ映画協会)

「いまや中国映画一本の平均興行収入は30億円前後。『映画は儲かる』が若手実業家の共通認識となり次々と映画制作会社が誕生していますが、オリジナルコンテンツを製作する土壌はまだまだ未成熟。結果として彼らは海外コンテンツのIP(知的財産権)を獲得しようと血眼になっているのです」  ユニークなのは、あくまでIPを獲得し、中国人キャストでリメイクする場合が多い点だ。現地の人気俳優を使うことでより集客が見込める意図もあるが、中国では1年間に上映できる外国映画が34本までと決められており、リメイクし国産映画として上映することで制約を回避しているのだという。 「特にニーズがあるのはアニメや漫画、東野圭吾や村上春樹など、すでに中国で知名度のある作品。人気作ともなると1億円の値がつくケースも。とはいえ『日本には中国人にはできない発想の作品が多い』といわれ、総じて日本産コンテンツへの関心度は高い。ただ制約も多く、戦争や歴史、ホラー、血が流れる描写などはタブー。タイムスリップも禁止です。実は数年前、登場人物が高所から飛び降りることでタイムスリップする映画が流行り、その真似をして死亡者が出たため。多くの中国人はまだ映画に耐性がなく、現実と虚構を混同してしまうのだそうです」
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一方で消極的な日本のコンテンツホルダーたち
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