不正会計疑惑に揺れる伊藤忠商事、「商社トップ」の裏に巧みな広報戦略

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=104746  そもそも過去5年間の推移を振り返ると、伊藤忠の純利益はほぼ伸びていないことがわかる。’15年度は前期比で増益を見込んでいたが、他社の減損額が大きいため余裕で純利益トップになれると見るや、急遽追加で自社も減損を出し、減益した。  早めに減損を出しておけば、来期以降で計上する額を減らせて、利益を積み上げやすいからだ。このように、’10年に岡藤社長が代表取締役に就任して以降の伊藤忠は、見せ方が非常にうまい。

米国ファンドが警告する伊藤忠の損失隠し

 前述したとおり純利益はほとんど伸びていないにも関わらず、株価は5年間で3倍弱にまで上昇している。株価は純利益と会社への期待度で決まるが、伊藤忠は後者を引き上げるのに長けている。  昨年1月、当時からチャイナリスクがささやかれつつあったにも関わらず、中国の国有企業にタイの財閥と合弁で1兆円以上もの投資を行って攻めの姿勢を見せた。その後半年間、伊藤忠の株価は上がり続けた。  これについても、伊藤忠の出資分は6000億円ほどだったが、経済メディアにはなぜか”1兆円”という数字が踊った。  このように、近年の伊藤忠はブランディング、PR戦術に非常に長けているといえる。合法の範囲でよく見せるならば問題ないが、今回米国のファンド・グラウカスが指摘しているのは、意図的に減損額を小さく見積もっているのではないかという点だ。  これからのグラウカスの追及と伊藤忠の情報開示により、真相が明らか担っていくのに期待したい。  ところで、本稿をはじめ当連載では、公開情報を読み解くことで企業の意外な実態を知れるということをテーマにしているが、逆に言えば、日本の経済メディアは数字の読み込みが甘く、印象論で企業報道を行うことがたびたびある。証券会社のアナリストなどと違って、記者・デスクに会計知識がないことも多いからだ。  意図的でなくとも経済メディアが企業のPRに加担してしまっている可能性もあると念頭に置いて、ビジネスパーソンは実態をきちんと事実に基づいて見定める必要がある。 <文/大熊将八> おおくましょうはち○瀧本哲史ゼミ出身。現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok
1
2
3
進め!! 東大ブラック企業探偵団

ニッポンを救うホワイト企業はここだ!!

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会