そして、8月2日、スペイン国有鉄道はニューデリーとムンバイ間の1400kmの所要時間の短縮を成功させた。
この区間は、既存のインドの列車では17時間以上もかかっていた。それをタルゴは2時間短縮させることを達成したという。試運転の途中で強雨に見舞われた為に更なる短縮が出来なかったとされ、もしそれが無ければ12時間47分で目的地に到着していたとタルゴの担当責任者は説明している。
タルゴは7月にはインドで時速180kmを記録しているが、今回の試運転では平均速度は時速106.52kmであったという。インドの列車のこの区間の平均時速は89.76kmであることからすると、格段のスピードアップである。タルゴの車体はアルミ製で軽量、しかも振り子式車輪である為に曲線部での加速と減速もより早い切り換えが出来るという利点も所要時間の短縮に繋がったようだ。
(参照「
Cinco Dias」)
もちろん、この時間短縮が可能となっても果たしてスペインがタルゴの受注ができるかという保障はない。特にフランスは高速列車のインドへの売り込みに強い関心を示し、双方の閣僚級での会見も既に達成している。
しかし、スペインは先ず在来線の列車の売り込みでスペイン製の列車に信頼をもたせ、そこから高速列車の売り込みに移る考えのようだ。
その背景には、インドにおいて果たして高速列車がどこまで採算ベースに乗れるのかという疑問がまだ拭えない点がある。その意味では在来線での近代化に目を向けたスペイン国有鉄道の視点は正しい方向にあるのかもしれない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。