海外の企業にはすでにRPAを導入し、数十億円規模のコスト削減を実現し、それを競争力の原資にし始めているところも出てきている。日本企業においても、その取り組みがグローバルな競争力を左右することになりかねない。
「RPA時代においては、変化するスキルセットへの対応など、従業員の意識改革が求められることになります。ホワイトカラーにとっては、その中でどのように自分のキャリア向上を図るか考え行動することが求められます。
また、企業経営者にとってはRPAを自社の経営にどう取り入れ、優位性を発揮するかが問われることになるでしょう。さらに、必要なスキルを持つ人材の育成も急務になります。従業員が納得できるコミュニケーションやトレーニング体制の整備なども必須になるはずです」
さらに、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やSSC(シェアード・サービス・センター)などのベンダーにとっても、RPAの活用が事業戦略の要になるという。
「RPAの普及は大げさでなく、これまでのワークスタイルを変革するものになるでしょう。業務効率の改善のみならず、従業員をルーティン作業から開放し、職場のモチベーションを向上させることができるのです。労働時間短縮などにともなうワークライフバランスの充実も実現します。女性や高齢者、外国人など多様な人材の活用もできることになるでしょうし、少子高齢化・人口減少にともなう労働力不足の問題にも対応できると思います。
むろん、その前提して、RPAの導入により創出された時間や削減できたコストを何に使うのかという視点も重要です。今後は、自社にとってふさわしいRPAを早期に検討し、導入を進めることが今後の経営課題になるでしょう」
かつて、インターネットの誕生が雇用を喪失させると言われた時代もあったが、実際には逆に、多くのビジネスを生み出し雇用を創出した。同様に、RPAの普及も意欲ある人材や企業にとって大きなチャンスになり得るのだ。 企業も、そしてビジネスパーソンもまた、積極的に取り組むべきテーマの一つと言えるだろう。
田中淳一●KPMGコンサルティング パートナー。国内外コンサルティング会社のパートナーを歴任後、KPMGコンサルティング株式会社SSOA(Shared Services and Outsourcing Advisory)CoE統括パートナー。RPA(Robotic Process Automation)/AI/デジタル・レイバーによる業務改革、ビジネス革新のサポート、RPA時代を見すえたターゲットオペレーティングモデル(あるべき業務の姿)構築に精力的に取り組む。一般社団法人日本RPA協会専務理事。
<取材・文/HBO編集部>