事態が一変したのは今年の5月。ホンハイへの買収が決まり、大幅なリストラ敢行が現実味を帯びている。決算概要資料には「グローバルで最大7000人程度の人員削減」との記載があった。
「今回のリストラに関しては40代以上が中心で、工場勤務者、海外での削減が大半とのこと。ただ最大の懸念事項としては、若手社員のモチベーションが著しく低下していることでしょう。実際に40歳以上の社員はほとんど上げ目がない状況を見ているので、自分達の将来も『リストラされてもしかたない』という覚悟の声もあるほどです。若手の技術者はどんどん国内外に流出し、既婚者層は否応なしに転職活動を余儀なくされている状況です」(週刊誌記者)
別の若手社員はいう。
「今回の買収に関して、若手社員の反応は2つに分かれます。1つは、『窮地を救ってくれてありがとう』という感謝の声。これは成果主義を歓迎する社員たちの層で、特殊な例かもしれません。もう一つは、ホンハイの歴史を振り返っても、将来的なリストラや労働環境が悪くなることは目に見えているという“恐怖”の声。40代以上の社員は、自分の未来に望みがないと半ば諦めムードですが、自分達が40代になった時に果たして会社に残ることができるのか、と不安を募らせています」
7000人規模のリストラが敢行された場合、その社員たちの転職先はどうなるのか。先出の大手人材紹介会社の営業によれば、その選択肢は限られてくるという。
「現在の中途採用の求人は売り手市場。ただし、その大半はエンジニア、施工管理、設計、営業と特定の職種に偏っている状況です。加えて、対象となる年齢層は35歳前後を求めている企業が多く、年齢的な足枷は年々強くなっている傾向がある。昨年、自主退職者が発表された際は市場にも大きな動きがありましたが、今年はその流れが緩やか。選ばなければ職にあふれることはなさそうですが、その選択肢は極めて少ないかと思います」
ホンハイに“切られた”社員たちはどこに向かうのか。その未来は決して明るいものとはいえなさそうだ。
<取材・文/HBO編集部>