大西卓哉飛行士、宇宙へ出発。これからの日本の有人宇宙開発はどうなる?

国際宇宙ステーションに到着した大西宇宙飛行士(写真手前一番右) Photo by NASA/NASA TV

大西さんは宇宙で何をするのか

 大西卓哉さんは1975年生まれで、現在40歳。今回が自身初の宇宙飛行となる。日本人宇宙飛行士としては11人目に宇宙へ訪れることになり、またISSに長期滞在する日本人飛行士は6人目となる。  大西さんは以前、全日本空輸(ANA)に勤めており、旅客機のコ・パイロット(副操縦士)として活躍していたという。その一方で、映画『アポロ13』を見たことがきっかけとなり、宇宙飛行士への憧れも抱き続けていた。  転機が訪れたのは2008年。この年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が新たに日本人宇宙飛行士を募集すると発表。応募した大西さんは、高い倍率をくぐり抜け、2009年2月にISSに搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として選抜された。このとき、昨年初の宇宙飛行を行った油井亀美也さん、また来年に宇宙飛行を予定している金井宣茂さんもほぼ同時期に選ばれている。  大西さんはその後、日本や米国、ロシアなどで厳しい訓練を行い、2011年7月にISS搭乗宇宙飛行士として認定。その後も訓練を重ね、2013年に打ち上げられた日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機では、軌道上の宇宙飛行士に指示を与える役割(CAPCOM)を担当するなど、宇宙飛行士に必要な技能を磨き続けた。  そして2013年11月、ISSへの長期滞在が決定。その後もさらに訓練を重ねた末に、今回の打ち上げを迎えた。  大西宇宙飛行士は今回、約4か月間にわたって国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する。その中で、宇宙という特殊な環境を利用した各種実験や、ISSそのものの保守や整備、ISSにやってくる補給船の到着や出発の支援、さらに地上との交信イベントへの出演など、多忙な毎日を過ごす。  大西飛行士が実施する(あるいは関わる)実験の中でとくに注目されているのは、「マウスを用いた宇宙環境応答の網羅的評価」と呼ばれるもの。これはISSの日本実験棟である「きぼう」に専用の装置を設置し、その中でマウスを飼育し、宇宙という特殊な環境が、生物の遺伝子や細胞に与える影響を調べることを目的としている。日本が「きぼう」で哺乳類の実験を行うのは今回が初めてのことだという。またマウスは、米国の宇宙船を使い、生きたまま地球へ回収される。  このほかにも、フリーズドライにしたネズミの精子を宇宙環境に置き、その後回収して卵子内へ注入。宇宙で保存した精子がどれだけの受精率をもつのか、宇宙を飛び交う放射線の影響はあるか、子ネズミの出産率はどれぐらいか、といったことを調べる実験や、宇宙環境を利用して高い純度の結晶を作り、新しい材料を生み出すための実験などが予定されている。  ミッションの終了時には、今回搭乗したのと同じソユーズ宇宙船に乗って地球に帰還し、リハビリや結果報告などを経て、そしてふたたび宇宙へ飛び立つ日に向けた、訓練や勉強の毎日に戻ることになるだろう。
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4つの極に分かれる世界の有人宇宙開発
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