日本人はなぜ不安なのか? 40年前に書かれたライシャワーの洞察

危ういバランスの上に成り立つ豊かさ

 ライシャワーは、日本が経済発展していくための絶対的な前提として、世界的な平和によって機能する自由貿易を挙げている。資源や土地に乏しい日本が生き延びていくためには地球大での通商関係が不可欠だというのだ。日本は独力で繁栄、発展することができず、多くの他国との相互依存の関係が必要となる。それを可能にする平和と友好の態度こそが、日本の生きる道だと説いているのである。  しかし、ここまではそう目新しい議論ではない。問題は、そうした姿勢を維持し続けたとしても、貿易立国として繁栄し続けるのには限界があるということなのだ。ライシャワーは、次のように記している。 <他方、日本の輸出の大半を占める工業製品や高級なサービスは、原材料と農産物の制約こそあれ、ほとんど無限に生産の増加が可能であり、これらの生産能力をもつ人々の数も、不可避的に増大することになろう。だとすれば、これらの製品やサービスの価格は、「補充不可能」な資源や農産物価格との対比において、いきおい下降せざるを得ない。十分な量の製品を売ることで、必要な輸入品の代価にあてるという日本のしくみは、このときにこそ、さらに困難の度を加えることになろう。>(35 貿易)  そのため、「豊かさを増すことはおろか、現状を維持することすらむずかしくなっていく」との予測がなされたのであり、2016年現在の日本を見れば、ほぼこの見立て通りに推移してきたと言える。ゆえに戦後から高度経済成長期を経てバブルを経験しながら、ライシャワーの目には日本人に確たる自信や根拠がないように映ったのかもしれない。
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日本人が抱える「漠たる不安」
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