Twitterで広まった反差別運動 #Safetypinキャンペーン
もちろん、ヘイトクライムの増加に伴ってそれに対抗する声も大きくなっている。ツイッターから始まった#Safetypinというキャンペーンは、その名の通り安全ピンを衣服などにつけるだけで、自分が「安全」な人間であるというメッセージを発し、差別に対抗しようという趣旨で、大きく広がっているようだ。また、4日の朝にはロンドン市内各地の地下鉄駅などで、ヘイト反対のメッセージがプリントされたステッカーが配られるキャンペーンもあった。しかしこうした動きに対し、反差別のメッセージを身につけるだけでは解決にならないという批判も上がっている。実際にヘイトクライムが起きた時に、周囲の人が仲裁に入らないケースが多く報告されており、現場で行動を起こさないと意味がないというのが主な理由だ。
より混迷を深めていくEU離脱問題の渦中で、移民に関する議論も当分落ち着くことはないだろう。ヘイトクライムの増加は、英国社会の歪な側面を露わにしたと同時に、これまで蓋をしてきた現実を直視する機会でもあるかもしれない。また、これは少子高齢化で近い将来移民の受け入れ拡大に現実味が帯びている日本においても、一つの教訓とすべき事例だろう。移民がもたらすメリットは多岐にわたっており、適切なコントロールと議論の下であれば相互に利益があるはずだ。国内で互いを攻撃しさらに対立を深めるのではなく、これを機に冷静な移民政策の議論がなされることを一市民、そして一移民として切に願っている。
<取材・文/箱崎日香里(翻訳家・ライター)>