イギリスのEU離脱で高ぶる反移民感情とヘイトクライムの実態

箱崎日香里

国民投票後に拡大したヘイトクライム

ヘイトクライム

SNSに投稿された動画には、3人の若者が移民と見られる男性に暴言を吐き、ビールをふりかける様子が収められていた

「アフリカに帰れ」「イングランド出身でもないなら黙れ、汚い移民め」「移民は強制送還されろ」。英国のEU離脱の是非を問う国民投票の結果が出てから4日後の28日、ソーシャルメディア上で一本のビデオが出回った。ビデオに映っているのは、マンチェスター市内を走るトラムの車内、混雑する朝の通勤時間帯に、3人の若者が乗客の1人に暴言を吐き、持っていたビール瓶の中身を浴びせかける姿だ。若者たちの発言の多くは放送禁止用語で、乗客の一部からは「赤ちゃんも乗っているのに」「恥さらし」と非難の声が飛ぶ。ビデオが公開された数時間後には、ビデオに映っている若者たちとみられるそれぞれ16歳、18歳、20歳の若者が逮捕された。その翌日には、筆者の自宅にも近いロンドン市内東部にある公園ニューイントン・グリーンで、何者かによって「FUCK EU」「PACK YOUR BAGS SCUM(荷物を纏めろクズ)」という落書きが見つかった。遡って国民投票直後の25日には、イングランド中部のハンティンドンで「Leave the EU」「No More Polish Vermin」(EUを離脱しよう、ポーランドの害虫はもういらない)とタイプされ、丁寧にラミネートまでされたカードが住宅や学校、車などにばらまかれた。

 これらは国民投票後に目立つようになった差別行為及びヘイトクライムのほんの一部で、似たような事件を全て挙げているときりがない。筆者もソーシャルメディア上で、友人知人にここ数日ヘイトクライムを見聞きしたか尋ねてみたところ、1日のうちに5件の体験談が寄せられた。全国警察署長委員会の発表によると、投票日の23日からの1週間で、警察当局の出資するヘイトクライム防止のためのウェブサイトTrue Visionへの通報は331件に達した。これは通常の週平均63件の実に5倍以上だという。ツイッター上では#PostRefRacism(国民投票後の人種差別)というハッシュタグが多数のヘイトクライムの報告を集めている。

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移民問題に焦点をあてたUKIPの戦略

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