最古の商業マスコット「ミシュランマン」の誕生秘話――デビュー当時はまるで怪物?

世界最古の商業マスコット、ミシュランマンことビバンダム

 さて、そんな世界的老舗タイヤメーカー、ミシュランを語る上で外せないないのが、世界最古の商業キャラクターの一つとして有名な、マスコットの「ビバンダム(Bibendum)」ですね。日本では「ミシュランマン」の方が通りが良いかもしれません。  ビバンダム、通称「ビブ」のコンセプトは1864年に、ミシュラン兄弟が高く積み上げられているタイヤの山を見た時に、これに手足をつけて人間みたいにしたらマスコットになるんじゃないかなという冗談で盛り上がったことに端を発しています。  特にこのアイデアを気に入った、アンドレ・ミシュランはイラストレーターのオギャロにスケッチを依頼、自らも手を加えるほどお気に入りだったようですが、実際にミシュラン社の看板に謎の怪物として登場したのは、約34年も後の1898年のことでした。

謎の怪物感満載だった初代ビバンダムとその名前の由来

 満を時した?その記念すべき初登場ですが、丸眼鏡で煙草をくゆらせながら、釘や鉄くず、ガラス片の入ったグラスで乾杯している姿は、、、今のいかにもユーモラスなミシュランマンからは想像できないほどの不穏な怪物感がありますね(笑)。  実はこの広告の構図自体は、元々ビール醸造所の看板のために考えられたもので、釘や鉄くず、ガラス片といった障害物を呑み込む、パンクに強いタイヤということを訴えている、結構ユニークなものです。  そして、ここでそのキャッチコピーとして使われている「Nunc est bibendum(いざ、飲まん)」こそが、ビバンダムの名前の起源であり、ティエリーというレーシングドライバーがアンドレを見かけた時に、広告のことがあったので「おや、ビバンダムじゃないか」と声をかけたことに由来しています。  ちなみに、この「Nunc est bibendum」は古代ローマ時代の詩人、ホラティウスの詩に出てくる「Nunc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus.(今は飲むときだ、今は気ままに踊るときだ)」からの引用であり、これは「メメント・モリ」の思想に基づく「(人はいつか死ぬから)今を楽しもう」という考えに由来しています。

時代やタイヤとともに変化した、ビバンダムの外見と性格

 こうして、インパクト十分なデビューを果たしたビバンダンムでしたが、その後は時代やタイヤそのものの変化に合わせて、ビバンダムの容姿も熟れたものに進化していきました。例えば、彼の体のタイヤの幅が昔に比べて広くなっているのは、時代とともにタイヤの幅が広くなったことに由来しています。  また、自分の体の一部であるタイヤを困っている人に分け与えるという、アンパンマンのような心優しい設定(現在は無くなったみたいですが)が後から付けられたり、初代が大好きだった酒や煙草を嗜む姿も見かけなくなるなど、性格的にも落ち着いていったようです。  なお、彼の体の色が白いのは、誕生時は前述した「カーボンブラック(炭素によるゴムの強化)」技術が発見されておらず、タイヤの色が白かったことに由来していますが、この点だけは変わらなさそうですね。  考えてみれば、ミシュラン兄弟がビバンダムを着想した1864年頃の日本といえば、池田屋事件とかが起きていたわけで、時代に合わせて変化しながら100年以上、世界中で認知されている商業キャラクターというのは、あらためて凄いことです。 決算数字の留意事項 基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。 【平野健児(ひらのけんじ)】 1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『SiteStock』や無料家計簿アプリ『ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。 <写真/Hajime NAKANO
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