カタルーニャ州議会選挙で独立派が勝利。揺らぐスペイン政府への信頼感

photo by makamuki0(CC0 PublicDomain)

 先日「バルセロナがスペインリーグでプレーできなくなる!? スペインにある『独立問題』」という記事を配信したが、ついに9月27日、スペイン・カタルーニャ州の州議会選挙が行なわれ、その結果、カタルーニャの独立を支持する3政党が過半数の議席を獲得した。

 では、カタルーニャ州の州民は独立を支持したのかというとそう単純な話にはならないようだ。

 というのも、スペインの通信社『europa press』が伝えたデーターを基にすると〈得票数では過半数を満たさない47.8%(1,910,075票)に留まり、独立反対派の4政党の票が過半数の52.2%(1,915,727票)〉を達成したというのだ。

 マス州知事がこの選挙を「カタルーニャの独立に賛成か否かを問う州民投票」と位置づけていたことから判断すれば、独立反対を訴える票のほうが独立支持票を上回ったことになる。即ち、得票数で考えれば独立の為のプロセスを歩むことは否定されたことになる。

 しかし、議席数で過半数を得た独立支持派の3政党はこれから18か月を目標に独立のプロセスを歩むと発表した。

一枚岩とはいかない独立支持派


 議席数では勝利した独立支持派だが、前途に多くの問題を抱えていることになる。それは、先述したように得票数では反対派が上回るなど必ずしも民意が得られていないということと同時に、支持派の内部的な要因もある。

 今回の選挙の為に、独立支持派のカタルーニャ民衆集中党(CDC)とカタルーニャ左派共和党(ERC)は連合して統一候補者リストを擁立した。「Junts per Si(一緒にYes)」が連合の呼び名である。この連合はカタルーニャのブルジョア層を支持基盤にもつ右派政党(CDC)とスペイン立憲君主制を否定した左派共和主義党(ERC)によるものであり、すなわちイデオロギー的に相容れない2政党の連合である。唯一、共通しているのはカタルーニャの独立を目指すということだけである。そこにさらに極左派の民主統一党(CUP)が加わって、この3政党が独立支持派となっているわけだ。

 今回の選挙の結果、この3政党が72議席を獲得した(68議席で過半数を満たす)ということになるのだが、この3政党のうちのCUPは、汚職に関与している疑いのあるCDCのマス党首が州知事に再選されることに反対しているのだ。しかも、イデオロギー的にCDCやERCの2政党に比べると、CUPは完全な極左派。スペイン憲法さえ全面否定している政党なのだ。

 イデオロギーが違い過ぎるこの3政党が政権を運営して行くこと自体が難しいというのは明白だ。仮に、「一緒にYes」のCDCとERCの2政党だけで政権を担おうとしても、この2政党だけでは62議席しかなく、4政党による独立反対派の63議席に1議席及ばず、マス党首が知事として就任出来なくなる。よって、CUPの今後の動きが注目されているのだ。

 そして、CUPはこの選挙を独立を問う州民投票と位置ずけた意識がより強く、独立支持派の票が過半数に達しなかったこの選挙結果を前に、今後も独立プロセスを歩むことを支持するのかということにも疑問視されているわけである。

揺らぐラホイ首相の立場


 そしてことは国政へも及んでいる。カタルーニャの独立の動きが昨年から活発になることを読めなかったラホイ首相の政治感覚にも強い疑問が持たれ始めたのだ。しかも、今もラホイ首相はマス州知事の要望は検討する用意があるが、それが違憲に繋がることは受け入れることは出来ないという姿勢を昨年から押し通している。

 違憲に繋がるか否かは政治交渉によって解決することが出来るのに、充分な交渉にラホイ首相は当初から応じる姿勢がない。僅かに二度交渉しただけである。政治家として不器用な人物なのだ。しかも、この選挙でラホイ首相が率いる国民党(PP)は20議席から11議席となって大敗した。今年のアンダルシア州議会選挙でも国民党は大敗しており、政治アナリストの間ではラホイ首相の退陣の声が出てきたほどだ。

 今年12月に予定されている総選挙では、ラホイ首相が国民党の党首であれば敗北は間違いないと言われている。今回のカタルーニャ独立問題は、交渉に柔軟な姿勢で応じる構えのないラホイ首相では、1978年以降のスペイン国家にとって最大の問題になると予測されているのだ。

 この12月の総選挙次第では、政権交代の可能性もある。カタルーニャの独立支持派はこの総選挙でカタルーニャの問題により理解を示す新しい政権が誕生することを視野に入れて、独立のプロセスを歩むのか? 或いはそれに関係なく、独立の為のロードマップを断固進めて行くのか? これから独立支持派の動きが注目されることになる。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。


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