牛丼屋の松屋が、あえてカレーにこだわる理由とは?

松屋のカレー01

松屋フーズが経営する「マイカリー食堂」の欧風ビーフカレー

「なぜこの価格で、これほどのカレーを提供できるんですか?」

 老舗カレー店の経営者が唸ったのは、ある外食チェーンのカレーだ。各社が顧客獲得のためにしのぎを削り、“ウリ”をつくろうと必死になる中、牛丼店にも関わらず、なぜかカレーの評判が高いのが『松屋』(経営:松屋フーズ)だ。冒頭のセリフは、通年メニューのオリジナルカレー(330円)に対しての言葉である。

 家庭的なカレーが誰にでも受け入れられる味だとすれば、松屋のカレーは好き嫌いの別れそうなスパイスが薫る本格派。さらに、期間限定としてフレッシュトマトカレーや超激辛スープカレーなど、より個性的なメニューを提供することでも知られている。全国チェーンらしからぬチャレンジングな味作りなのだ。

 牛丼店にも関わらず、なぜそこまでカレーに力を入れるのか? 松屋フーズ商品開発部の久岡利至氏に話を聞いてみた。

カレーへのこだわりは、創業当初からの会長のこだわり


「やはり、家庭では食べられない味を提供することで、差別化を図っているところはありますね。そもそもの話で言えば、松屋は創業時から牛めし以外にも力を入れており、現在は定食とカレーを加えた3本柱でメニューを構成しています。カレーについては、35年前からビーフカレーを提供していて、実はそれも名物だったんです。価格は450円でしたが、牛骨や牛肉を煮込んだブイヨンベースのカレールーは、当時としては破格の品として人気だったようです。帰省のお土産として、まとめ買いしてくださるお客様もいたと聞いています」

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=57137

松屋カレーの歴史 それがリニューアルされ、オリジナルカレーに置き換えられたのが15年前。

「時代に合わせた変革ですね。それと、弊社の会長はとにかくカレー好きな人でして、以前、『耳の裏が熱くなるくらいでなければカレーじゃない!』と言われたこともあります。74歳になった現在でも、スパイシーさへのこだわりは衰えないようです」

 カレー類の出食数は年間約2000万食、売上としては全体の10%ほど。それでも異彩を放っているのは、こうした会長の意向もあり、個性派カレーを開発する土壌が育っているということでもあるだろう。

 ちなみに、松屋フーズではカレー専門店「マイカリー食堂」(JR三鷹駅)も経営しており、カレー店のテストケースとしてデータをとっているそうだ。

マイカリー食堂

「マイカリー食堂」では、ベースのカレーにトッピングができるようになっている。自分好みのカレーを食べることができる。

個性的過ぎるトマトカレーの登場


 数ある限定カレーの中でも、際立っているのが、2009年に登場したトマトカレーだ。初登場時、通常のカレーの2倍もの売上を達成したというヒット商品である。

トマトカレー

限定メニューながら、人気の高いトマトカレー。もちろん、筆者もこのカレーのファンの一人だ!

 その味は、トマトの酸味、強烈なニンニク風味、そしてスパイスという3要素が際立っており、かなり極端な構成だ。あまりに個性が強すぎるため、お客の好き嫌いも相当に分かれる様子。中には「あれはカレーとは別の食べ物」とまでいう人も……。一方で熱心なファンも多いようで、ネットの声を拾っていくと、さらに鮮烈な味を望む声や、通年メニューへの格上げを望む声が見て取れる。

 新機軸を打ち出したメニューだけに、レシピ開発時の社内の反応は芳しくなく、「これ売れるの?」といった懐疑的なものも少なくなかったという。

「そもそも、『これをカレーと定義してよいのか?』という根本的な疑問もありました。お客様のカレーに対する期待を裏切ってしまうのではないかと。それと、トマトの酸味やさわやかさを強調すると、ご飯に合わないという問題もありました。それらの問題をクリアするため、試食の繰り返すことで味のバランスを決めていくわけです。毎日カレーの試食があるものですから、『もうカレーは食べたくないわ!』という社員がちらほら出てくるほどでした(笑)」

 もちろん、チャレンジングなメニューが多いだけに、いまひとつだったメニューもある。一つの例として、2005年に発売された「超激辛スープカレー」は、あまりに辛すぎてお客からクレームが入ったとか。

「それでも松屋としての個性を出していくため、特徴あるカレーを提供していきたいですね。オリジナルカレーにしても、トマトカレーにしても、味は変化させていっています。みなさん、おわかりになりますでしょうか? 傾向としては、やはりパンチが強くなっていっていますね。現在のトマトカレーに慣れた方が昔のトマトカレーを食べたら、トマト味の強さや水っぽさを感じるかもしれません」。

 トマトカレーの通年メニュー化は、残念なことに予定していないそうだが、松屋の風物詩として提供を続けていきたいという。

 低価格メニューを提供するチェーン店が軒並み苦戦を強いられる中、カレー専門店のココイチは業績好調のニュースをよく耳にする。果たして牛丼屋の松屋は、本家のお株を奪うことができるのだろうか? カレーへの飽くなきこだわりが、実を結ぶことを期待したい。
<文・写真/江沢洋>

【江沢洋】
週刊SPA!でも活躍するベテランライター。カレーへのこだわりが人一倍強く、都内有名カレー店に訪れるために、片道2時間をかけ、地方からたびたび上京する。


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