20世紀後半だけが格差なきよき時代だった――読まずにすます『21世紀の資本』

実に700ページにも及ぶトマ・ピケティ氏の著書『21世紀の資本論』が世界的ベストセラーとなっている。広がる格差と資本主義の矛盾を記したこの本が、なぜ今、人々を熱狂させるのか?今回「超難解」とも言われる同書を超カンタン解説する。

20世紀後半だけが格差なきよき時代だった



ピケティ 本書の第1のポイントは、「資本主義が発展すると、平等になっていく」というこれまでの通説を覆した点にある。

 獨協大学経済学部の本田浩邦教授が説明する。

「これまでは、資本主義が発展していくと、平等化していき、みんなが豊かになる、と経済学では考えられていました(クズネッツの逆U字型仮説)。要は、産業革命が起こり、農業から相対的に所得差が生じやすい工業へとシフトする過程で一時的に格差が広がるが、資本主義の発展とともに、低所得者層の政治的な発言力が大きくなったり、所得の再分配などが整備されたりして、結局は平等になっていく……はずだったのです。ところが、本書は平等化していくどころか、格差は広がり、第1次大戦前の格差のレベルに向かっている、と実証したのです」

山形浩生氏

山形浩生氏

 ’80年代前半までは、それまでの経済学の常識(逆U字型仮説)は通用していたが、近年、各国でこれに当てはまらないケースが続出しているのだ。大手シンクタンク・コンサルタントで評論家の山形浩生氏が続ける。

「20世紀の半ばから後半にかけては、世界で格差拡大を抑える動きがあったので、それまでの常識が通用した。大きな要因としては、2度の大戦で資本そのものが破壊され、株価が大暴落した結果、資産が大きく目減りしたから。ただ、戦後になっても格差拡大を防ぐ意識的な試みは世界中にあった。それは、社会主義との競争のせいなのか、ウォール街で大暴落が起きて、『やはり金持ちは信用できない』という気運が高まったからか……いずれにせよ、各国で格差を減らそうとしていたわけです。振り返れば、20世紀後半の世界は結構よかったのでは? 過去にも格差を食い止められたのだから、やる気さえあれば今からも遅くない! というのがピケティのメッセージなのです」

 古き良き一億総中流が懐かしい……。

『21世紀の資本論』用語集


『資本論』
1867年出版のマルクスの主著。資本家が得る利潤は、労働者が生み出した「余剰価値」を搾取したものと説く。貧困化した労働者が革命を起こし、資本主義は終わりを迎え、社会主義、共産主義にとって代わると予言

「r>g」
『21世紀の資本論』の核心を表す数式。資本主義下では、r(資本収益率)はg(経済成長率)を常に上回る、という意味。つまり、投資で得られる利益の伸び率は、労働賃金の上昇率を上回る。資本主義の根本矛盾を表現

【山形浩生氏】
大手シンクタンク・コンサルタント。評論家。翻訳家。近著『「お金」って、何だろう?』(岡田斗志夫との共著。光文社新書)ほか、著書多数

【本田浩邦氏】
獨協大学経済学部教授。専門は現代アメリカ経済論。共著に『格差と貧困がわかる20講』(明石書店)、『現代アメリカ経済分析』(日本評論社)

― ピケティ『21世紀の資本論』丸わかり解説【2】 ―


21世紀の資本

格差をめぐる議論に大変革をもたらしつつある、世界的ベストセラー

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