ビジネススキルをボードゲームから学ぶ「マインドラボ」って何だ?

コリドール 毎月第3水曜日の19時30分~21時30分、東京・六本木のフューチャーインスティテュート株式会社セミナールームで「マインドラボ・おとな会」というワークショップが開催されている。 「マインドラボ」はイスラエルで生まれた教育プログラム。さまざまなボードゲームを使って考える力を養う。イスラエルには政治面や国際問題などでネガティブなイメージもあるが、人口約800万人と小国ながら、国民一人あたりの起業率、博士号保有者数、特許数は世界一という“インテリジェンス立国”である。  ナスダック上場企業数は140社と本国アメリカを除けば上場企業数No.1。2013年度の経済成長率も日本1.6%、アメリカ1.9%に比べて3.3%と高く、経済のなかで存在感を強めている。  そのイスラエルには、50%以上の公立小学校で導入されている「マインドラボ」という教育プログラムがある。  世界で高く評価されていて、アメリカやイギリスなど世界15カ国でも実施されている。日本でも2006年から、私立小学校や学習塾を中心にプログラムは展開されている。2013年秋に大人を対象とした「マインドラボ・おとな会」が始まった。 「人のポテンシャルを高める」というプログラムを実際に体験するために、9月17日(水)に行われた「ボードゲームで学ぶ! 計画力とリソースマネジメント!」に参加した。今回のゲームは「コリドール」。対戦型のボードゲームで、10枚の“壁”を使いながら、自分のコマをより早く相手側のスタートラインまでたどりつかせるのが目的だ。  ゲームのルールは以下の通り。 (1)1ターンごとに「自分のコマを進める」、「壁を置く」のどちらかを選択する (2)コマは前後左右に1マスだけ動かせる。斜めはNG。 (3)壁を置く位置は横でも縦でもOK。だだし、2マス分にまたがるように。(3マスにまたがって置くのはNG。) (4)フェアプレイ精神にのっとり、相手のゴールまでの道をすべてふさがない。(必ず1か所は相手の道を残しておく)  このゲームは、勝ち進んでいると思っても、相手の選択や自分の選択次第で状況が刻々と変化する。たった1つの判断ミスが致命傷となる。今回のワークショップ中にも、予期しなかった場所に壁を置かれ、一気に不利な状況となり負ける、ということが起きた。「コマを動かす」という意味では将棋にも似ているが、ルールがより単純化されているので初めて盤面に触れても十分楽しむことができる。  目的はより早くコマを進めてゴールにたどり着くこと。しかし、相手のあることなので攻めてばかりはいられない。攻めつつ守り、守りつつ攻めるというビジネスに必要なセンス、スキルが求められる。  壁にしても、ただ相手の進路を阻めばいいわけではなく、自らの進路も確保しなければならない。自分のコマとゴールまでの距離を測り、次なる相手の狙いを予測しながら手を打っていく。10枚のみの壁も、どのタイミングで使うのかを考えなければならない。頭をフル回転させるのでゲーム中に脳がしびれてくる。  1ゲーム終わるたびに、ゲームの進め方をたどりながら勝因は何か、敗因は何かといったことを振り返る。将棋でいう「感想戦」だ。インストラクターから「なぜそうしたのか?」と質問も飛ぶ。自分なりに理由を考え、対戦相手に伝えることで、戦略のヒントが生まれ、次のゲームに活かすこともできる。 「マインドラボ・おとな会」を運営するフューチャーインスティテュート株式会社の前田友佳さんは「大切なのはゲームに勝つことではありません。ゲームを通じて自分がどのように考えたのかを言語化すること。そしてゲームの中で実践した考え方を、ビジネスシーンなど日常で活用していただくことが、この会の目的です」と話す。  この「マインドラボ・おとな会」は、1回2000円。リソースマネジネントだけでなく、論理的思考力や意思決定力など、毎回異なるビジネススキルをテーマに開催している。ビジネスに必要なスキルの鍛え方はひとつではない。 <取材・文/河本美和子>