有働由美子の会話技術論――ウソでもいいから自信をもって話すこと

【石原壮一郎の名言に訊け】~有働由美子の巻 Q:子どものころから、話が下手なのがコンプレックスです。何かを話そうとしても、相手の反応が鈍いとだんだん言葉を濁して、結局途中でやめてしまったり……。上司にもお客さんにも、しょっちゅう「何が言いたいのかわからない」と言われて……。なので同僚との飲み会やランチも苦手、というか苦痛でしかありません。こうすれば話し上手になれるという「コツ」があったら教えてください。(東京都・26歳・営業)
ウドウロク/有働由美子

ウドウロク/有働由美子

A:会話って難しいですよね。うまく盛り上がれば楽しいですけど、沈黙が流れたりなんだかギクシャクしたり……。まして「自分は話が下手だ」と思ってしまうと、さらに言葉が出てこなくなってしまいそうです。前回の冒頭で、とくに意味なく朝ドラの「とと姉ちゃん」の話を出した続きといっては何ですが、今回はその番組にちなんでみましょう。 「あさイチ」の司会を務めているNHKアナウンサーの有働由美子さん。イノッチこと井ノ原快彦さんとの絶妙なコンビネーションを見せ、ワキ汗のにじみやつけまつげの脱落に対する対応でも称賛を集めるなど、今日も多くの視聴者、とくに「しっかりものの40代女性にキュンとくる男性」を魅了しています。  余談に熱が入り過ぎましたが、そんな素敵な有働さんのこれまでの発言から、上手に話すための「コツ」につながりそうなものを拾ってみましょう。 「いざ話すときは、ウソでもいいから自信をもって話すことです。自信がなさそうにモゴモゴ話すと、どんなに内容が良くても、相手の心には響きません」 「自分は話がヘタだ」と思っていると、ついモゴモゴした話し方になりがち。しかし、それは謙虚なようで、じつは言い訳がましく予防線を張っているだけとも言えます。自分が話すことなんて、しょせんたいしたことじゃないし完璧を求められているわけでもない――。そう開き直ってとりあえずは自信をもって堂々と話すのが、人様に話を聞いてもらうときのマナーと言えるでしょう。  応用編というか、もう少し踏み込んだ「コツ」として、有働さんはこうも言っています。 「テレビの場合はインパクトの強い言葉を最初に持ってくるのが基本です。これはプレゼンテーションなどにも応用できます。私はいつも、頭の中でまずスポーツ新聞のような見出しをつけて、そこから話を始めるようにしています」  要は「まず結論から言え」ってことですね。テレビやプレゼンだけでなく、普段の世間話でも「で、結局、この人は何を話そうとしているんだろう……」と頭にたくさん「?」が浮かんできて、聞いているのが辛くなってくるケースは多々あります。ついダラダラと結論が見えない話をしてしまうという行為は、誰もがやりがち。「まず見出しをつける」ということを心がけてみましょう。  そういえば、ちょっと前の回で「口がうまい」ことと「コミュ力が高い」こととはぜんぜん別だ、という話をしました。「口下手」なのはいいとして、「自分は話が下手」ということを口実に、しっかり会話しようとする努力を放棄したり、他人に対して腰が引けた接し方をしてしまったりするのは大いに問題です。でも、こうして「コツ」を知ろうとしているあなたは、そこは大丈夫。いろいろやってみることで、周囲からの見られ方も自分の意識も、けっこうコロッと変わるはずです。 【今回の大人メソッド】

何にせよ「下手」という自覚は成長の原動力

 会話に限らず、「自分は上手にできる」と思ったら、そこで進歩も成長も止まってしまいます。「自分は○○が下手」という自覚は、成長のための原動力に他なりません。いっぽうで、やらなければならないことから逃げるために、「下手」を言い訳にしてしまうことも。「下手」という自覚を悪用することばかりが上手にならないように気を付けましょう。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
ウドウロク

自他ともに認めるクロい部分も、ちょっとだけ残っているシロい部分も