「不本意な仕事」に落ち込んだ時に効くビル・ゲイツの言葉

【石原壮一郎の名言に訊け】~ビル・ゲイツの巻 Q:4月から社会人になりますが、今、憂鬱でたまりません。就職活動に失敗して、結果的に「すべり止め」の会社に入ることになったからです。両親は口では「会社なんてどこも同じだ。縁があったところでがんばれ」と慰めてくれますが、一生懸命に育ててそれなりの大学に入学させた息子が、しょぼい中堅企業にしか入れなかったことを残念に思っているに決まってます。友達だって、「あいつもその程度か」と内心バカにしているでしょう。ニートよりはマシだと思うしかないんでしょうか。(東京都・22歳・学生) A:今日も喫茶「いしはら」は、常連さんは誰もいません。きっとみんな、花見にでも行ってるんですね。夕方になって冷えてきたら、帰りに寄ってくれるでしょう。仕方ないので、また私がお答えさせていただきます。なるほど、春から社会人ですか。おめでとうございます。前途洋々ですね! いや、べつに嫌味を言っているわけではありません。不本意な会社だろうが何だろうが、あなたの新しい門出を心から祝福したいと思います。  まだ入社していないわけだから、会社のやり方に疑問があるとか仕事の内容が物足りないとか、そういう悩みではないわけですよね。あなたが不満に思っているのは、会社のネームバリューとか規模とか、要するに「聞こえがよくない」「見栄をはれない」という点ですよね。「それなりの大学」に入った自分としては、プライドが満たされない……と。  そんなくだらない悩みを深刻ぶって抱いているあなたには、マイクロソフトを創業して世界を変えたビル・ゲイツのこの言葉を贈ります。 「世間は、君の自尊心を気にかけてはくれない。世間は、君が自尊心を満たす前に、君が何かを成し遂げることを期待している」  あなたがどういう会社に入ろうが、誰も気にしちゃいません。気にするとしたら、会社に入ってからのあなたがどう成長して、どう活躍するかという点です。両親の言葉も、きっと本心でしょう。あなたが真意をまったく理解せず、自分の入る会社を「しょぼい中堅企業」呼ばわりして勝手に意気消沈していることを知ったら、どんなに残念に思うことか。  文句を言いたいなら、あなたが「しょぼい」と思っている会社で、誰にも負けないぐらい大活躍してから言ったほうがいいかと思います。まあ、根拠のないプライドと意味のない見栄に振り回されているいまのあなたには、無理な話ですね。新しい門出というせっかくのチャンスを棒に振らないように、マヌケな勘違いに早く気づきましょう。  当たり前ですが、会社の価値はネームバリューや規模や世間の評判とは関係ありません。大事なのは、自分がそこで何をするか、何を見つけられるか、どう利用できるかです。そもそも会社の価値なんて、気にしてもしょうがないんじゃないでしょうか。それは、第一志望の会社に入社できた場合も同じこと。ビル・ゲイツは「成功ってのは、厄介な教師だ。やり手を臆病者に変えてしまうからね」とも言っています。  就職はゴールではなくスタートです。「○○に入社できたオレ」に満足してその立場を大事にしようとし過ぎると、それはそれでいろんなチャンスや可能性を自らつぶすことになるでしょう。新社会人のみなさまにおかれましては、何によって自尊心を満たすかという点を間違えないように気を付けつつ、あれこれあがいていただければと存じます。 【今回の大人メソッド】

「不本意」と感じたら、その原因を考えてみよう

 新社会人に限らず、いい大人もしばしば「不本意な仕事」や「不本意な仕打ち」に出合います。「不本意」と感じる原因を落ち着いて考えてみると、それこそどうでもいい見栄やチンケなプライドに振り回されているケースがほとんど。自分のダメな部分に目を向けるのは勇気がいりますが、原因のくだらなさに気づいてしまえばこっちのもんです。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス) <写真/Claudio Toledo
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