CoCo壱番屋、廃棄カツ流出騒動に見る「ココイチイズム」

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 15日、カレーチェーンの「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋は、先だって発表があったトッピング用の冷凍ビーフカツの他に、チキンカツやロースカツ、メンチカツ、さらに系列の店舗で使用するラーメンスープやナポリタンソースも、産業廃棄物処理業者の「ダイコー」によって不正に横流しされたことが発覚したと発表した。  同社リリースによれば、問題となったビーフカツの不正転売品は工場で使用しているナイロンを主成分とする合成樹脂性の部品が混入した可能性があるため全ロットを廃棄したものであるという。また、その他の不正転売品も、廃棄物として扱われた品であることから、温度管理などの保存方法に問題がある可能性があり、不正販売品を見つけても決して食べないようにと呼びかけている。  壱番屋にとっては、いい迷惑のこの騒動だが、注目したいのは同社の対応の早さである。

チキンカツ以外で不正転売された可能性がある製品のサンプル画像(壱番屋プレスリリースより)

 報道によれば、同社のフランチャイジーに勤務するパートがスーパーマーケットで買い物中に発見し、本部に通報したのが今月11日(参照:1月14日付「産経新聞」)。その後13日には同社は「産業廃棄物処理業者による、当社製品(ビーフカツ)不正転売のお知らせ」というリリースを発表している。その間、中一日。商品が出る前に発覚し、きっちり廃棄処分されたとはいえ、製造段階での異物混入という同社にとってはあまり都合が良くない廃棄理由もきっちり明記したたうえで、不正転売の事実まで辿り着いてのリリースを出している。常に現場に立ち、自店のあり方に厳しくあった創業者の宗次徳二氏の”ココイチイズム”を体現していると言える。  さらに、不正転売の事実を突き止める迅速な調査力や、期せずして明らかになった「異物混入」の可能性がある場合には全ロット廃棄するという厳しい管理体制もさることながら、数多あるフランチャイジーの1パート従業員の声を本部がきっちりとすくい上げて、即座に調査を行った点も注目したいところだ。  現社長の浜島俊哉氏が19歳のときにアルバイトで入り、宗次氏に認められて社長にまで上り詰めた人物。現場の人間の声を軽視しない姿勢がここにも垣間見える。  こうした迅速な対応は市場も評価したようで、15日の同社株は前日終値から160円高の5800円となっている。  不幸にも廃棄を委託していた業者の不正に巻き込まれた形になった壱番屋。しかし、今回の一件によって、創業者の宗次徳二氏が植えつけた「ココイチイズム」が、ハウス食品傘下になった今もなお現場に根付いていることを世間に知らしめることになったと言えるかもしれない。 <取材・文/HBO取材班>