受注即完売! ペン型「ゆかり」開発秘話

ペン型ゆかり見本 発売45周年を迎え、今年は焼そばとのコラボまで果たした「ゆかり」。日本人が愛して止まないこのふりかけが、ペン型の容器に入って発売されていることを、皆さんはご存知だろうか?  昨年11月に発売されるや、ネットを中心にジワジワと話題になり、今年12月には、ついに品切れ状態に。通販サイトで17日と24日に再販されるも、これまた完売になり、2月15日に再度、受注開始を予定しているという盛況ぶりだ。  しかし、このペン型ゆかり、なぜペン型で発売しようと考えたのだろうか? 「もともとは社長用に作ったゆかりだったんです」と言う三島食品広報・佐伯俊彦氏に、開発秘話を聞いてみた。

もともとは粉末のお茶を入れるための容器だったペン型ゆかり

文房具とゆかり

文房具と混じっても、この通り。違和感ゼロだ

「もともとは、普段からゆかりを愛用する、弊社の社長のために作られたものだったんです。もちろん、ご飯にかける時もありますが、社長は焼酎にも入れて飲むんです。それである時、クラブで焼酎に入れて飲んでいたところ、女性たちから『たのしい』『私たちも欲しい』という話になり、これはコミュニケーションツールになると思い、商品化することになったんです」  焼酎に!? たしかに、焼酎に梅干しを飲む習慣はあるが、ゆかりを入れるという発想は……、何とも斬新だ。 「海外で赤しそは、ハーブ感覚で使われています。それを考えれば、納豆、ヨーグルト、ハチミツ、キャベツ、さらには、塩やきそばまで(笑)、どんなものにも合いますよ。それと、まだまだ検討の段階ですが、ふりかけ、飲料に続いてスイーツの開発を考えています」  ゆかりスイーツ!? 考えると夜も眠れなくなさそうだ。
ペン型ゆかり封入紙

ペン型ゆかりの封入紙に書かれた「縁もゆかりも一期一会」という文字。裏面には「紙には“書け”ませんが、食品には“掛け”られます」とある

「弊社には“縁もゆかりも一期一会”というキャッチコピーがあるのですが、試していないだけで、実は相性のいい組み合わせは、まだまだあるのではないかと考えています。スイーツ開発も、そういった経緯で始まっています」  チャレンジ精神あふれる社風だからこその開発というわけだ。ということは、ペンとゆかりの組み合わせも、この“一期一会”の発想によるものなのだろうか? 「あれは、お茶屋さんが粉末のお茶を入れるための容器なんですが、社長から『携帯用のケースが欲しい』とリクエストされたうちの社員が、たまたま見つけてきたものなんです。なので、他に容器の候補といったものはありませんでした。ただ、袋タイプと違って、表現できる面が少ないなかで、ゆかりのイメージを崩さずに認知いただけるようなデザインをすることには、苦労しました。商品化するにあたり、既成のペン型容器には紫色がなかったので、最終的にはオリジナルで制作することになりましたが、色合わせの調整に少し時間がかかりましたね」  なるほど。ちなみに、中身は入れ替えができる仕様になっているが、もともとが粉末のお茶を入れるための容器なのであれば、他のものを入れることもできるのだろうか? 「一般的に、塩やコショウの振り出し口の口径は2.5mmになっています。ペン型ゆかりの口径も2.5mmなので、粉末状のものであれば、入れ替えることはできるんじゃないでしょうか。ただ以前、青のりを入れてみたことがあるのですが、軽すぎて出にくかった経験がありますね(笑)」

「受注即完売」の状況でも、販路拡大の予定はなし

東急ハンズ桑名店のゆかり

東急ハンズ桑名店では、特設コーナーも設けられている

 昨年に発売されて以降、すでに1万3000本を売り上げているペン型ゆかり(2015年12月22日現在)。しかし、現状販売している通販サイト、銀座にある広島県のアンテナショップ、広島県内にある「道の駅舞 ロードIC 千代田」以外で、販売する予定は今のところないようだ。 「いまのところ、販売先を増やす計画はありません。大量生産できない商品ですので、現状維持で進めてまいります。ただ、テストマーケティングとして「東急ハンズ名古屋店、ANNEX店、桑名店」では数量限定で販売いただいております」  ゆかりファンにとっては、何とも歯がゆい回答だが、ペン型ゆかり生産のために、本来のゆかりの供給が追いつかなくなってしまっては、本末転倒。スーツの胸ポケットから、スッとペン型ゆかりを取り出す。そんなスマートな姿を披露するには、もうしばらくかかりそうだ。<文・写真/HBO編集部>