株投資の勝ち負けを決する、[調査力]の磨き方

費やす時間の9割は“調査”です

 小社Webサイトの日刊SPA!にて、連続投資小説「おかねのかみさま」を連載中の大川弘一氏。’97年、メルマガ配信サービス「まぐまぐ」を創立後、ビジネスの酸いも甘いも知り尽くした大川氏は、個別株のデイトレでも好成績をあげている。その手法は「一つの銘柄を徹底的に調べ尽くす」こと。「おかねのかみさま」も、調査力の重要さを知らない大学生・健太に対して、神様がお金の世界の法則と矛盾を説いていくという物語だ。 「僕が株式投資に費やす時間の9割は“調査”。上場企業にはとても大きな特徴があります。それは、決算説明やリリースを行う際に、業績が悪くなることを述べないというもの。業績が悪化する可能性について延々と株主に語ってしまうことはその間の無策を宣言するようなものなので当然ですが、それだけを鵜呑みにすると“外側の情報”しか入らないのです」(大川氏)  企業の発表や経済ニュースだけでは見えてこない“企業の真の実力”を見極めることが、勝率を上げるための方策というわけだ。  では、大川氏の考える調査力とはどういったものか。具体的に見ていこう。

決算書や財務諸表ってやはり理解できないとダメですか?

 どうお金を集めて、何に投資し、利益はどれくらいか――会社の基本活動を知ることのできる損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)の財務3表にはヒントが溢れています。そこから調査を掘り下げたり視野を広げる必要があるわけですが、たとえば岩塚製菓(2221)という会社への投資を検討したとします。
岩塚製菓

株主や債権者に公開する義務がある決算書はホームページから閲覧できる。

 岩塚製菓の売上高は200億程度で、競合の亀田製菓と比べて5分の1程度。ところがBSを見ると、流動資産54億円、有形固定資産69億円に並ぶ「投資そのほかの資産」の項目で、投資有価証券835億円という数字が出てきます。岩塚製菓の時価総額は372億円(11月24日現在)ですが、実にその2.5倍の資産スケールとなるのです。  続いて、2015年度第2四半期のPLを見ると、岩塚製菓が保有している835億円という有価証券は、1億3000万円の営業利益を遥かに上回る13億9000万円もの配当金を生み出していることがわかります。本業よりも出資した会社からの配当が収益のメインという会社であるわけです。
岩塚製菓財務諸表

数字の羅列にヒントが隠れているのだ

 さらに有価証券報告書を調べてみると、岩塚製菓が出資している会社は中国旺旺という会社であることが判明します。30年ほど前、台湾にある宜蘭食品工業の董事長(社長)から技術供与要請を受けた岩塚製菓がこれを受諾。台湾でトップクラスの菓子メーカーに成長した宜蘭が岩塚製菓と共同出資をしてつくった会社が中国旺旺で、岩塚製菓の出資金10億円が80倍になったということが判明しました。 「株主構成を見ると創業家一族の比率が高くて、台湾の株を持って配当でのほほんとしてそう。ただ、時価総額が低いから、『日本の製造技術のノウハウを輸出』『亀田に負けない商品を作る』みたいな強いアクションを実行できる経営者に買収、またはMBOになれば株価ははね上がるかも」  そんな具合に、基礎調査から始めて、投資の判断材料、ストーリーを構築することができるのです。 『基礎は超大事。そこから視野を広げるのはもっと大事!』 ― 勝率上げる投資の調査力 ―