ハメ込み?有益情報?[証券会社レポート]の虚実を見抜く
2014.09.18
証券会社が発行するレポートの影響力は甚大で、株価が大きく左右されることが多い。しかも、「事前に仕込んでいる」「利益確定のための高値演出」といった批判もある。証券会社レポートの実態を明らかにすると同時に、我々個人投資家はどう活用すればいいのかを探った。
8月16日、これまで投資判断を「売り」とし、ミクシィ株を空売りし続けてきていた世界最強の投資銀行、ゴールドマン・サックス証券(GS証券)が、白旗を揚げた。「売り」から「中立」に格上げし、目標株価も960円から6500円まで引き上げたのだ。ところが翌営業日の18日は材料出尽くしで“寄付天井”を形成。格上げと同時にGS証券は4万株の空売りもしていたことが判明し、個人投資家を中心に「個人投資家を狙った、外資系証券によるハメ込みではないか」と批判の声があがった。
こういった個人投資家からの批判に対して、「単なる妄想でしかない」と切り捨てるのは、某証券会社のアナリストだ。
「GS証券がレポートと同時に空売りをしていてレポートの格上げと空売りが連動しているように見えます。しかし、そこには機関投資家などの発注主がいて、証券会社はその注文を受けて発注しているだけ。個人投資家をハメようなんて、まったくありませんよ」
証券会社の主な仕事は、機関投資家に株を売ること。株を売る証券会社はセルサイド、株を買う機関投資家はバイサイドと呼ばれる。
「マーケットで話題になる証券会社レポートは、セルサイドのアナリストが分析したもの。これは、証券会社が機関投資家に株を売るための販売資料であって、単なる“営業ツール”でしかありません」(国内大手証券アナリスト)
機関投資家に営業をかける際、「レポートになる前の情報を顧客に話すことは当然ある」とセールス部門の証券営業マンは話す。
「私たちは社内のアナリストにヒアリングして、『A社がよさそう』といった話も聞きます。そして顧客の機関投資家には『ウチのアナリストはA社がよさそうと言っていますよ』と話すこともあります。ただ、機関投資家がA社の株を買うかはわからないし、レポートが出たからといって株価が上がるとも限りません。レポートはインサイダー情報ではないですから」
ただし、「営業マンがアナリストにヒアリングしたとき、『A社はいいね。近いうちにレポートでA社を書くつもり』と、かなり踏み込んだ情報を聞くこともある」(某外資系証券セールス)と明かす。
また、機関投資家からの注文を受け付ける証券トレーダーは「『この銘柄はどう?』と機関投資家から問い合わせがあれば社内で調べて教えることもあるし、『この売り主体は誰?』と聞かれたら断ることもできない」(外資系証券トレーダー)そうだ。ちなみに、アナリスト説明会では、机の下でスマホからコソコソと顧客にメールを送っている人もいるとか。マメな連絡が太客を掴むコツのようだ。
⇒【後編】に続く http://hbol.jp/7244
<ゴールドマン・サックス証券>
●コニカミノルタ[東証1部・4902]
現在株価→1157円/目標株価→1400円
●ホシザキ電機[東証1部・6465]
現在株価→5020円/目標株価→6400円
●ファンコミュニケーションズ[東証1部・2461]
現在株価→1255円/目標株価→2100円
●フリークアウト[マザーズ・6094]
現在株価→6390円/目標株価→9700円
●JT[東証1部・2914]
現在株価→3558.5円/目標株価→4200円
<野村證券>
●日本農薬[東証1部・4997]
現在株価→1158円/目標株価→1750円
●JXホールディングス[東証1部・5020]
現在株価→533.5円/目標株価→780円
●住友倉庫[東証1部・9303]
現在株価→561円/目標株価→770円
●ディスコ[東証1部・6146]
現在株価→6660円/目標株価→9112円
●島津製作所[東証1部・7701]
現在株価→905円/目標株価→1200円
※7~8月にレポート内で格上げした銘柄、新規買い推奨の銘柄、買い継続で目標株価を引き上げた銘柄をフィスコ小川佳紀氏がピックアップ。現在株価は9月1日の終値時点のもの
― [証券会社レポート]の虚実を見抜く技術【1】 ―
ハメ込みか、有益情報か、個人投資家はどう向き合うべきなのか……?
中長期で狙いたい「買い推奨」銘柄
ハッシュタグ