中国のスタジオが「コスプレ衣装撮影」の穴場な理由とは?

ショッピングモールでは記念写真店のイベントなども行われている

「スタジオが広くてスタジオ内でシーン別にボックスのように分かれているので、衣装を引き立てるための最適なシーンでの撮影ができますし、費用も日本の7分の1から10分の1くらいで済みます」  そう語るのは日本でコスプレ衣装を販売するオンラインショップを楽天などで3店舗展開している日本人女性社長だ。  彼女は、シーズンごとに必要な衣装撮影をするため、モデル同行で定期的に大連へやってくる。大連にモデルと一緒に大量のコスプレ衣装をスーツケースへ詰め込みハンドキャリーし、数日間に渡り現地のスタジオに缶詰で撮影して、データを受け取り帰国する。それでも航空券代とホテル代、滞在費を含めても大連で撮影するほうがはるかに安く、メリットも大きいという。  大連は、スタジオ撮影が格安と言うがどのくらい安いのか教えてもらうと、日本だと同レベルの撮影ができるスタジオが存在しないので一概に比較はできないと前置きした上で、日本では同規模の商用利用を前提としたスタジオ貸し切り撮影の場合、カメラマン、ヘアメイク、アシスタント付きで、1日30、40万円ほどかかり、シーンやセットが限られる小スタジオで、カメラマン、ヘアメイク、アシスタントなしで1日15万円ほどするという。  一方、大連の場合は、1日2000元(約3万8000円)ほどで済み、撮影後はコンピュター上でリクエストに応じて画像補正もしてくれる。機材やセットのクオリティも高く満足していると話してくれた。  話を聞いたときは、10月31日のハロウィン向けの衣装撮影で、続いてクリスマス用のコスプレ衣装を撮影していた。限られた時間で着替えも多いので、アシスタントの存在は非常に大きく、撮影もスムーズに進んでいた。

安さとクオリティの秘密は「中国人の写真好き」

クリスマス向けコスプレ衣装の撮影風景

 近年、物価上昇が著しい中国大連でスタジオ撮影が安い理由がある。  そもそも、現代中国には、結婚や入学、就職など記念事に家族や親族等で作りこんだ写真撮影をする習慣があり、そのためスタジオ撮影が安く、クオリティも高くなっているのだ。セットや機材、小道具も豊富で、スタジオ内で様々なシーンを撮ることができる。  また、大連の街中を歩くと結婚写真専門店が数多くある。結婚写真も撮影できる「桂由美ウェディングサロン」もあり大連女性の憧れの的となっているくらいだ。  春や秋の晴れた日には、観光名所や縁起がいいとされる人気スポットで結婚写真を撮っているカップルも見かける。カメラマンにレフ板を持つアシスタント、ヘアメイクなどをぞろぞろと引き連れ、さながらプロのモデルの撮影隊くらいの規模だ。  大連のスタジオで撮影していてトラブルとか問題はないかと前出の女性社長へ尋ねると、 「特に大きな問題はありませんね。まあ、問題というほどではないのですが、撮影してくれるカメラマンさんは、普段、人物撮影に慣れているためか自然とモデルへ焦点があたってしまいます。私たちの商品はコスプレ衣装なので、”衣装メインで”とたまに軌道修正も兼ねてカメラマンさんへ声をかけることがあります。大連のスタジオ環境は、私たちのように専属カメラマンやヘアメイクを持てない小さな会社には大助かりですよ」  また、アパレル企業の中には、多くの商材が中国で製造されていることもあり、中国工場で作られた商品を現地で撮影する企業も出てきている。  日本人以上に「写真大好き」な中国人のカルチャーを効果的に利用した「大連でのスタジオ撮影」。大量の商品画像などを撮影する人にとっては案外まだまだ穴場なのかもしれない。  <取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma