リポート「改憲1万人集会」 “動員”された1万人の観衆たち――シリーズ【草の根保守の蠢動 第23回】
2015.11.13
この大会に向けては、日本会議に所属各組織からの動員がかけられている。動員の実施は当然の話であって驚くべきことではない。だが、その整然たる様は目をみはるものがあった。
大量の観光バスが会場の目の前にある駐車場に次々と横付けされていく。中型バス23台 大型バス45台までカウントしたが、あまりにも大量かつ矢継ぎ早で、途中でカウントを諦めてしまった。注目すべきは、この大量のバスのほとんどが、12:45から13:30までの45分間に一気に到着したことだろう。約45分間で約70台のバスを誘導している計算になる。さらに、この大量のバスとバスから吐き出される高齢者の波を、バスとは別に到着し続ける駅からの徒歩参加者や、政治家たちのハイヤーの間を縫って、現場の誘導員が合理的かつスムーズに誘導していく。誘導員の圧倒的多数派はガードマンでもイベント会社の人物でもない。スーツを着た日本会議関係者だ。日本会議及びその周辺の人脈は、これまでたびたび武道館を会場に各種の「一万人大会」を開催してきた。その度にノウハウを蓄積してきたのだろう。実に慣れていて無駄がない。
圧倒的な宗教動員
バスから降りた人々や駅からの徒歩参加者は、それぞれ割り振られたゲートに吸い込まれていく。
設けられた入口は、AからEまでの5つ。Aゲートは、「日本会議」各支部から動員された人々と、報道関係者の受付。B,C,Eは団体受付。そしてDが一般参加者受付だ。
各種団体用に入口が分けられているものの、団体の徽章に引率される人の群れはない。かつて日本会議のイベントでは、仏所護念会や霊友会など所属団体の名前を大書した団体別受付を設けていた。だが今は、宗教団体の名前がどうしても目立ってしまうこの方式をやめたからだ (※1)。
唯一の例外は、神社関係団体と遺族会。
- 神社本庁関連の方々を誘導していた旗
- 遺族会関係の方々を誘導していた旗
圧力団体の理想形
これほど、政治家にとって魅力的なこともあるまい。確固たる固定票は得体の知れぬ「時代の風」や「無党派」なるものよりよほど頼りになる。かつてこのような圧力団体は、陣営の左右かかわらず、あちこちにあった。しかしそれらの団体は高齢化と長引く不況も相まってほぼ姿を消した。今の日本でこれほど細密な動員を未だに実施できる団体は、日本会議ぐらいのものだろう。
あの大会に出席した国会議員たちは、改憲どうのこうのという話の内容より、この計数管理能力にこそ魅力を感じたはずだ。また、政治家たるもの、そうあらねばならない。思想信条などではなく、この魅力こそが、「改憲」の道に政治家たちを動かす原動力なのだ。
大会の開催中、日本会議事務総長・日本青年協議会会長の椛島有三は、終始、満足そうな顔で観客席を見つめていた。
椛島は、きっと、宿願の達成を確信したはずだ。
※1:上杉聡,2003,「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』」, 『季刊 戦争責任』39:44-56
※2:この「神社本庁と遺族会だけは別扱い」な待遇は、「神社本庁本丸論」や「戦前のエスタブシュメントの子孫たち」といった日本会議界隈を観察しだしたものが初手で陥りやすい誤解を生じさせている
<取材・文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie) 撮影/我妻慶一 菅野完> |
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