フォルクスワーゲンの不祥事で追い込まれるヨーロッパのディーゼル小型車メーカー
eldiario」、「ABC」「iprofessional」など3紙面で報じられていた。780億ユーロの損失ということになると、〈同社の2014年の計上利益の7倍の損失額〉ということになるという。
更に、前出の3紙で、クレディス・スイス銀行のアナリスト部門が指摘していたのは〈VWが顧客への補償が相当なる金額となり、それが最悪330億ユーロ(4兆2,900億円)まで及ぶ可能性がある〉ということだ。即ち、それは〈問題の車の点検、排ガス不正のソフトの撤去、更に必要な調整などが含めての概算である〉という。
3紙の中で特に『eldiario』電子紙は〈同社の株価は既に43.12%値下げとなっているが、今後更に20%下落する可能性あり〉と同銀行のアナリスト部門が予測していることも報じている。
しかし、ことはフォルクスワーゲンだけにとどまらないのが今回の一件の深刻なところだ。
スペイン経済紙『el Economista』は、VWの問題のエンジンEA189を登載したディーゼル車が〈窒素酸化物(NOx)が7倍以上の量を排出していた〉という事体はEUの規定上でも深刻だと報じ、〈ディーゼルエンジン登載の小型車のメーカーは規制に添うディーゼルエンジンの開発は負担が多く〉なるとしている。
しかもこれらのメーカーではディーゼル車に頼っていたために、ハイブリッド車についての開発は日本車に比べ数年遅れているという問題がある。同記事では窒素酸化物の排出規制に合わせると同時にハイブリッド車の開発もせねばならないとう二股の投資を迫られるという厳しい事体に追い込まれることになるということも指摘されており、CO2の排出基準が現行の1kmあたり130gから2021年までに95gまで落とすという新規定をクリアする開発同紙はできなくなる可能性があるとしている。
なにしろ、同紙が報じるゴールドマン・サックスの見立てによれば、ディーゼルエンジンはそもそもガソリンエンジンに比べ既に1,300ユーロ(169,000円)ほど高くついている上に、〈新しい規定に添うエンジンの生産には300ユーロ(39,000円)が余分にかかることになる〉というのだ。ただでさえコスト高のディーゼルエンジンに、さらなる課題が上積みになったわけである。
そして問題はこのコスト高がフォルクスワーゲンではなく、むしろフォルクスワーゲンのライバルとも言える多くの欧州の小型車メーカーを圧迫することだ。
フォルクスワーゲンの場合は〈大型車やプレミアム車も充分に生産しているので、小型エンジンの開発への負担も他社に比べ比較的に少ない。しかし、他のヨーロッパのディーゼルエンジンを登載した小型車のメーカーである〈プジョー・シトロエンとルノーはそれぞれ生産台数の60%を小型車が占め、フィアットは40%を占めている〉のだ。
この先、こうした欧州のディーゼル小型車のメーカーは、発端となったフォルクスワーゲン以上に厳しい状況に追い込まれていく可能性が高いのである。
<文/白石和幸 photo by Mahal (CC0 PublicDomain)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
フォルクスワーゲン(VW)は排ガス規制の不正による損失を65億ユーロ(8,450億円)と計上していることが既に世界のメディアで報じられている。しかし、10月2日にクレディス・スイス銀行は〈最大780億ユーロ(10兆1400億円)の損失が生じる可能性がある〉と発表したということがスペインやアルゼンチンのメディアである「規制に適合するエンジンの開発費負担が小型車メーカーを圧迫
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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