大量の違法な政治献金。まだまだ抜け穴が埋まらない――江藤貴紀「ニュースの事情」

 2015年9月25日の朝日新聞朝刊で、秀逸な調査記事が出された。 「政党支部1割に寄付 補助金交付企業、規正法では禁止 2013年報告分」 (朝日新聞 15/7/30)
政治献金

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 同報道によると「国会議員が代表を務める政党支部の1割で、国の補助金交付の決定通知を受けた企業・団体から1年以内に寄付を受けていた」という。  この報道にある通り、補助金交付企業からの寄付は原則的に禁止されている(根拠条文は政治資金規正法22条の3)。  こういう規制があるのは、国から補助金をもらっている企業から、政治家に献金してもよいとなると、政治家と企業が「越後屋、おぬしも悪よのう」、「いえいえ、お代官様ほどでは」という風に補助金を山分けしてしまう余地があるからである。  まあバレなければ政治家と企業の間で「Win-Winの関係」が結べるわけで(当然、国民の利益は関係なし)、案の定、その手口が横行していた……というわけである。  だが、上記の朝日新聞報道が非常に網羅的にこの手の事例をさがしたために、今後は同様の補助金交付企業から政治家への寄付は無くなると思われる。  では、それで「補助金交付企業→政治家」という資金の流れが変わるかというと疑問である。  というのは、政治資金規正法には、もう見つかっている穴があってそれをつけばこの補助金キックバックスキームを継続することが出来る。  例えば、古賀純一郎氏の『政治資金—実態と論理(岩波新書)』 や『北隆雄氏の「財界の正体 (講談社現代新書)』などで従来から指摘されているが、企業から政界への金のルートとしてはオモテの献金の他に政党機関誌(例えば、自民党でいうと『自由と民主』というタブロイド紙。他の政党でも各々、出していることが多い)への割高な広告出稿がある。  そしてこの広告契約の場合だと、国から補助金を受け取る企業が、これらへ広告費として支払うことは禁止されていない。  他にもありえるパターンとして、政治家の親族企業から、相場より割高な物品購入やリース契約をするという「みかじめ 料」形式が考えられる。  ちなみに、政治家から親族に政治資金をキャッシュバックするというスキームも存在するので、この応用として補助金をもらっている企業から政治家親族の企業などに色んなものを買わせたり貸したりすればよいわけである。(参考リンク 『鳩山邦夫氏、妻と太郎の経営する「鳩山企画」に、1年に自動車1台200万、電話機10台を44万円で「借りる」キャッシュバック契約』(エコーニュース)  その他にも、会社名義ではなく役員個人やあるいは従業員が「自発的に」献金をしたことにするという方法もあり、従来から報道され続けている(例えば2011年12月1日の日経新聞記事「電力、労使で資金提供 政治資金収支報告書」参照)。  この場合も補助金交付企業自体からの献金ではないため、政治資金規正法を脱法した献金が可能である。  いずれも古い手口だが、政治資金規正法はいつまでたっても、これらの脱法的な政界への資金流入についての規制をしていない。一見すると、不思議な法律である。  だが、何故なのかを冷静に考えれば話はシンプルである。すなわち、法律を作る政治家が、自分の首を絞めるような法律を作りたがるわけはない。  つまり政治資金規正法は「意図的にザル法にしてある」と考えれば腑に落ちる。この前提に立つと、補助金交付企業から政界への資金流入のルートは、企業献金法式から、政党機関誌への広告出稿や役員個人単位に変わる~そしてその規制も行われずに、実質的に資金のキャッシュバックが続く仕組みは変わらない~と予想される。 <取材・文/江藤貴紀(エコーニュースR)> 【江藤貴紀】 情報公開制度を用いたコンサルティング会社「アメリカン・インフォメーション・コンサルティング・ジャパン」代表。東京大学法学部および東大法科大学院卒業後、「100年後に残す価値のある情報の記録と発信源」を掲げてニュースサイト「エコーニュース」を立ち上げる。