環境保護を訴えるバス停の看板
中国は、深刻な大気汚染など環境後進国というイメージが強くエコとは無縁の国と思っている人も多いだろう。確かに家庭ごみの分別はいまだ実施されていないし、路上にはゴミが散乱するのも事実だ。
しかし、中国は日本では知られてないエコな面を持っており、近年は急速にグリーン社会化が進んでいる。しかもすでに一部においては環境先進国を自認する日本をも凌駕しているのではないかという面も見せ始めている。
まずはレジ袋の全面有料化だ。2008年6月1日から厚さ0.025mm以下のポリエチレン製の袋の製造、販売を全面禁止し、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、個人商店などのレジ袋を原則有料化した。 全面禁止が発表されたのが2008年1月だったのでわずか半年での実施は中国だからできる荒業と言える。
原則と書いたのは、なし崩し的に食品を包む薄い袋は認められ、個人商店ではそれを配布しているのだ。
ただ、大手のスーパーは違う。一般的に中国では法律施行後、数年後で緩んでいく傾向が多いのだが、大手のスーパーでは現時点でもレジ袋小が0.3元(約5.7円)、大で0.5元(約9.5円)で販売されている。さらに最近、増えてきている富裕層向けの高級店では1枚1元(約19円)という高級レジ袋も登場している。
もっともこれくらいの金額ならレジ袋を躊躇なく購入するだろうと思われがちだが、中国人は基本的にケチな人が少なくないので、有料だと例え1元でも使わないことが多い。たとえば、日本と比べると中国は電気代が高いので、節電意識が強く、遅くなるまで電気をつけなかったり、冷蔵庫の電気をまめに切ったりするほどだ。中国を訪れた日本人が中国の空港は薄暗いと口にすることにも関連する。
そのため、レジ袋有料化の効果は絶大で、全面有料化実施前は、年間500億枚消費されていたレジ袋は、2009年6月の調査では66%減の170億枚になった。
今では、町中のスーパーで観察するとレジ袋をもらう人は5人に2人くらいで、自分のバッグへ入れたり、マイ袋を持参する光景が定着化している。
日本では2013年にイトーヨーカ堂やイオンがレジ袋の全面有料化を実施しているが、個別企業での取り組みに留まっており、日本の消費の中心コンビニでは缶コーヒー1つでもレジ袋を無料提供しているため全体的な削減効果は乏しいと言える。
ちなみに、台湾、韓国、香港でもレジ袋全面有料化が実施されており、欧州ではドイツ、イタリアを始め多くの国で有料化されている。
-
-
約57円で購入したスーパーのレジ袋小
-
-
個人商店では食材を包む袋がなし崩し的に無料袋に転化
-
-
ドイツのスーパーの有料レジ袋(0.2ユーロ=約27円)
FC飲食店内で使われるプラスチック箸
続いて、この2、3年で急速に普及したのがプラスチックの箸だ。大衆食堂でもFC店でも木の割り箸が一般的だったのが、プラスチックに置き換わった。中国大連で5店舗の日本焼肉店を12年経営する中国人経営者によると、「特に法律的な縛りはありませんが、再利用できるプラスチックの箸はコスト削減になると経営者の中で広がり普及したようです。プラスチック箸1セットで1.5元(約28円)くらいです。コスト削減にはなりますが、うちは焼肉店なのでプラスチック箸だと網で溶ける恐れがあるので木の箸を使っています」
その一方で、「常連客の中からはプラスチックは不衛生だと心配する声も聞きます。中国人は、見えないところの清掃作業を信用しない人が多いからでしょう」(同)
客席に置かれるプラスチック箸を消毒する機械
そんな一般的な中国人の心理もあり、店でプラスチックの箸を使う場合は、炊飯器のような箸消毒器を客の目に見える場所に設置して安心感を与えるように行政指導があるそうだ。
前出の中国人経営者によるとプラスチック箸の急速な普及は日本の割り箸需要減少も要因の1つだと指摘する。
「日本の吉野家や松屋などの大手外食店がプラスチック箸に切り替えたことにより、輸出していた中国での割り箸製造コストが上がり、その結果、中国でのプラスチック箸普及につながったのでしょう」(同)
そういえば、5、6年前までは、ローカルの食堂でどこから手に入れたのかバーミヤンのロゴ入りの割り箸などが普通に使われていたが、それも見なくなった。
レジ袋にしても割り箸にしても日本より大胆に急速にエコが進んだ例と言える。
最後に自動車エコ事情を見てみよう。2009年に「省エネ・新エネルギー自動車のモデル推進都市」 に選ばれた大連市は、2010年から新型バスはハイブリット型が導入されその割合を年々増やしている。購入額は従来型の2倍するが、燃費は40%削減できる。ハイブリットバスと並行して、LNG(液化天然ガス)バスや電気バスも走り始めている。
しかし、タクシーやマイカーでは、まだ従来型の車が多く、日本のハイブリット車は中国では補助金対象外なため普及が進んでいない。中国政府が日本型のハイブリット車に補助金を出さない理由は、国産の電気自動車を普及させる狙いがあるとも言われる。すでに小型電気自動車や電動二輪車を目にする機会が増えている大連には電気自動車用の充電スタンド設置が進んでいるのだ。
-
-
大連で導入が進むハイブリットバス
-
-
LNG(液化天然ガス)バス
-
-
まだ台数は少ないが電気バスも登場している
-
-
設置が進む電気自動車用の充電スタンド
<取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:
@ito_wagatsuma>