ツイッターDM140文字制限撤廃でも、利用者減少の流れは止められない?
2015.09.17
2015年4~6月期の決算では前年同期比61%増の増収となったものの、株価の下落が止まらないツイッター社。株式上場の年の12月には最高額74.33ドルを記録したが、現在の株価は27ドル前後。深刻な状況に瀕している。
この株価下落の理由は、利用者数の伸び悩みが原因だと言われているが、果たしてツイッター社は、利用者数を今後伸ばすことができるのだろうか? 「使いづらい」とユーザーの間で不評だった140文字のDM文字制限が先月(8月)撤廃され、使い勝手はかなり良くなったはずだが、現在のところ、利用者数の増加には結びついていないようだ。
日本では不動の地位を築いた感すらあるツイッターが、なぜ苦戦を強いられているのか。SNS業界に詳しいITジャーナリストの三上洋氏に、その理由を聞いてみた。
そもそも日本でツイッターが爆発的に利用者数を伸ばしたのは、6年前のこと。日本中にツイッターが普及した理由は、主に3つあると三上氏は語る。
「1つは、有名人の生の声が聞けること。それまで、雑誌やテレビでしか見聞きできなかったことが、スマホ1つで常に手に入る。これは画期的ですよね。それともう1つは、簡単なツイートで自分が情報の発信源になれること。ふとつぶやいたことが、世の中のニュースになる可能性がある。これも大きな魅力でしょう。さらに、日本ならではの理由として、匿名性も重要なポイントです。不特定多数の人に情報を発信するオープンなツールであるにもかかわらず、自分の素性は明かさなくてもいい。2chがウケたように、匿名性を重視する日本人にはうってつけのツールなんです」
日本人の特徴に合ったツールゆえに利用者も増えたが、皮肉にも利用者数の伸び悩んでいる理由も、日本人の特徴に原因があるようだ。
「利用者数の伸び悩んでいる一番大きな理由は“炎上”という言葉があるように、何気なくつぶやいたことや半分冗談でやったことが、とんでもないニュースになる可能性があります。有名人もこういったことを危惧して、最近はツイッターをやめる人が増えています。日本人は、ブームの時はワッと群がりますが、いったんこういうマイナス点が見えると、サッと冷めてしまう傾向がありますよね」
トラブルを回避するためにやめる人も多いツイッターだが、その利用者は、SNSをやめたわけではなく、他のツールに流れていると言う。
「2つのツールに流れています。まず、ラインやフェイスブックといった身近な人たちに情報を発信するツール。それと、有名人の間では顕著ですが、写真だけでことが済むインスタに切り替える人は多いですよね」
全世界の利用者数に対する日本人利用者数の比率をみると、数あるSNSのなかでもツイッターは、圧倒的にその比率が高い。利用者数だけでみれば、国内でもフェイスブックに劣るものの、アクティブ率は上回っている。利用者数が減少傾向にあるとはいえ、まだまだ日本では、主流のSNSだ。
「ツイッターの利用者の伸びは減少傾向にありますが、それでも海外に比べれば日本はマシでしょう。その理由は、まず英語など他の言語に比べて、日本語は140文字あれば、それなりの情報を発信できる点にあります。中国語には負けるかもしれませんが、日本には俳句や短歌があったように、短い文章のなかに情報を綺麗にまとめる文化が根付いてますから、140文字は十分な文字数だと思います。それと、情報が拡散するSNSには危険性ももちろんありますが、災害などの際、どのメディアよりも早く情報を仕入れることができます。地震の多い日本では、欠かすことのできないツールなんじゃないでしょうか」
SNSとは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」の略だが、その意味は「ネット上での交流を通して、社会的ネットワークを構築するサービス」となる。その意味では、クローズされたコミュニティで展開されるフェイスブックやラインに比べ、ツイッターはより本来の意味に近いツールなのかもしれない。
「DMの文字制限が解除されたところで、ラインやフェイスブックとは利用目的が違うのだから、あまり意味はないでしょう。利用者の減少に歯止めをかけたいなら、発信した内容が修正できるようになればいいんじゃないでしょうか。この点を改善できれば、日本はもとより、世界中でもっと利用されるツールになると思います」
利用目的に合わせ、今後もさまざまなSNSが登場することが予想される。しかし重要なのは、本来の目的を見失わないこと。二兎追うものは一兎も得ず。今のツイッターはそんな状態にあるのかもしれない。
<文・写真/HBO編集部>
【三上洋】
セキュリティ、携帯電話・スマートフォン、携帯電話料金、ライブメディアのライター・ジャーナリスト。Twitter:mikamiyoh
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それでもツイッターが日本で利用される2つの理由
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