ビールの売り子に学ぶ営業の極意とは?
2015.09.01
ペナントレースも後半戦に突入したプロ野球。暑さが厳しいこの季節、試合観戦に欠かせないのがビールだが、スタンドでこれを販売するのは売り子と呼ばれるスタッフたち。その多くは10~20代の若い女性で、笑顔でビールを売る姿はいわば球場の華だ。
なかには試合より彼女たち目当てにスタジアムへ足を運ぶ人もいるほど。アイドル的な人気を持つコも多く、現在グラビアアイドルとして活躍中のおのののかが“美人すぎるビールの売り子”としてデビュー前に東京ドームでアルバイトをしていたのは有名な話だ。
最近では千葉ロッテマリーンズの本拠地、QVCマリンフィールドの売り子たちがアイドルグループ『マリーンズ カンパイガールズ』を結成。7月下旬にはデビュー曲を配信開始した。
同グループのリーダーを務める今井さやかさんは売り子歴8年目。通常、球場のビールの販売杯数は売り子1人あたり1日100杯前後と言われているが、彼女は平均200杯以上を売り上げる。最高記録はなんと590杯だという。
彼女はビールをたくさん売るコツについて、「まずお客さんに顔を覚えてもらうこと。そのためにもいつも笑顔でいることです」と話すが、実際同じ売り子から何度もビールを買うお客は意外と多い。もちろん、単にカワイイからとの理由で同じコから買うケースもあるが決してそれだけではない。
ビールの売り子事情に詳しい人材育成プロデューサーの原佳弘氏は、「トップクラスの売り子ほど広い視野と観察眼を持っています。近くの席だけでなく離れた席も見ていて、一度ビールを売ったお客が2杯目を飲みたがっているか、ほかにもビールを買いたそうなお客がいないのかを常にチェックしている。だから、行動にムダがなく、効率よくビールを売ることができるわけです」と分析する。
また、試合展開によって売り方を変えていくことも必要とか。
「ビールは5回を過ぎると売り上げが落ち始め、終盤で1点差ゲームだとあまり売れませんが、逆に点差が開いている時はよく売れます。各売り子の販売エリアは球場ごとに制限がありますが、マリンフィールドはどこでも自分の判断で移動していいので、試合の流れを気にしながらホームのマリーンズ応援席のライト側、ビジターチームのレフト側に移動するようにしています」(今井さん)
ちなみに売り子の場合、球場や契約元の酒店によって賃金体系は異なるが、多くは歩合給を採用。売り上げによって左右され、一般的な売り子1試合あたりの収入は7000円だが、2~3万円稼ぐコもいて、労働時間は同じでも収入格差はおよそ3~4倍だ。
「仕事があるのは月12日程度の試合開催日だけですが、時給に換算すると5000~8000円とアルバイトとしては破格の給料になります」(原氏)
とはいえ、重量15~18㎏のビールサーバーを背負っての球場階段の上り下りは、女子にとってかなりの重労働。それでも募集すれば10倍以上の応募が集まるのはやはりバイト代の高さだろうか?
「そういうコもいますが、お金よりも売り子に憧れていたり、興味があって入るコが多いですね。特に体育会系のコは、仕事を通じて成長したいなど意識を高く持っているコが多いです」(原氏)
なお、氏によると稼ぐ売り子には大きく3つの共通点があるとか。
「1つ目は嫌なことを引きずらないこと。たとえ売れなくても、他人と比較して凹んだりしないことが大事です。いちいちショックを受けていては、売り上げを伸ばせませんから。2つ目は自分の強みを知ること。スタンドで一緒になって応援するコ、積極的にお客とコミュニケーションを取るコ、逆に声をかけられやすい雰囲気を醸し出すコ、稼ぐ売り子にもいろんなタイプがいますが、彼女たちは自分のことを把握したうえですべてやっています。そして、3つ目は選ばれる工夫をすること。『球場ではこのコからビールを買う』と同じコから購入する方が意外と多く、目立つようにしたり、お客の印象に残ることが売り上げを増やすことにも繋がるわけです。売り子経験者は人材として企業にも人気で、就職してバリバリ活躍しているコも多いんです」(原氏)
特に営業マンは彼女たちに学ぶところが多そうだ。
【其の一】嫌なことを引きずらない
【其の二】自分の強みを知る
【其の三】選ばれる工夫を怠らない
【原 佳弘氏】
人材育成プロデューサー、中小企業診断士として、多数の企業研修や公開セミナーを企画。ビジネス的な視点から各球場のビールの売り子への取材も行っている
トップの売り子は一流の営業マン
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