ミラノの食通も唸った。日本酒輸出における欧州市場の可能性

当日は日本酒の知識も丁寧に伝えながらソムリエがサーブ

 イタリアといえば、西洋料理の母的な存在ともされる美食の国。なにはともあれ「マンマのパスタが最高!」なイタリアだが、次第に「和食」はポピュラーなものになりつつある。  しかし、その反面、日本酒となるとそこまでの認知度を獲得していないのが現実だ。なにしろ、「イタリア人は生まれてからイタリアワインに慣れているため、日本酒を飲むことは少ない」(イタリアのレストランジャーナリスト、マウリツィオ・ベルテーラ氏)のだから。  そんな中、7月9日にミラノ市内で「NPO日本料理アカデミー」が「和食と和酒を楽しむ会」というイベントを主催し、現地の食通相手に好評を博したという。  会場となったのはミラノ市中心部でもとりわけオシャレな人々が集うブレラ地区に位置する日本料理レストラン「SUSHI-B」。集まったのは、食の都であるイタリアの、さらに選りすぐりのミラノの食通として知られる有識者・ジャーナリスト・現地料理人だ。  このツワモノを相手に、日本料理と日本酒のマリアージュを提案するというのだからなかなかに難題である。そんなミッションに挑んだのは前出の「日本料理アカデミー」理事長である村田吉弘氏(京料理『菊の井』)が指揮する「SUSHI-B」の料理長、新森伸哉氏ら精鋭の料理人たち。さらにマリアージュの相手としては宝酒造から「松竹梅白壁蔵『澪』スパークリング清酒」、「松竹梅『白壁蔵』<生酛(きもと)純米>」「松竹梅『白壁蔵』<純米大吟醸>」の三種類の日本酒が用意された。

選りすぐりの食通相手に、京料理と日本酒はいかなる反応を勝ち得たのか?

国税庁サイトより

 繰り返しになるが、イタリアを始めとするEU諸国においては、日本食の浸透レベルと比較すれば日本酒の認知度は米国やアジア圏と比べればまだまだといったレベルだ。  さらに、当地の和食料理人も綿密な研究のもと、現地の人に合いつつ伝統を崩さない和食を提供し、すでに「イタリアワインと和食」のマリアージュが存在している。その上、相手はイタリアワインの誇りを持つ当地の食通である。  しかし、現地の食通は、初めて接した日本酒と和食のマリアージュに新鮮な驚きを得たのである。 「これまで和食は寿司と刺身しか知らなかったが、今日の日本料理と和酒のマリアージュは素晴らしい! 日本酒は今日飲んでみて、好きになった。色々な料理との組み合わせの可能性があり、ミラノでも人気が出そうだ」と興奮を隠さないのは、レストランガイド『イデンティタ・ゴローゼ』のジャーナリストのグワルテロ・スポッティ氏。

イタリア貴族のマリア・ジョゼ・ヴィスコンティ・ディ・モドローネ氏

 イタリア貴族もまた驚嘆の声を挙げた。「和食には、これまで白ワインを合わせていましたが、日本酒とのマリアージュを体験できて、すごく満足。色々な組み合わせの可能性を感じた。ただし、ラベルが日本語だから困ります。ラベルを翻訳してほしい」(マリア・ジョゼ・ヴィスコンティ・ディ・モドローネ氏)  パスタメーカー「バリラ」社の経営者一族であるエマヌエーラ・バリラ氏は当日が和食と日本酒の初体験だった。「和食は今日初めて食べてみて、とても興味がわいた。日本料理と日本酒がどう相性がいいのか、実際に体験してみて、とても勉強になった」  イタリアの食通に認められた「和食と日本酒」のマリアージュ。食の都であるイタリアはミラノでのこの反応を見ると、EU圏での日本酒輸出の可能性はまだまだ大きな可能性を秘めているのかもしれない。 <文/HBO取材班>
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