軟弱系ジム「プラネット・フィットネス」、自身のポリシーに対しては硬派だった

騒動の顛末を報じるLGBT系メディア「ADVOCATE.COM」

 6月26日、米連邦最高裁は一部の州で同性婚が認められていないのは憲法違反であるとの判断を下した。これにより、全米で同性婚が法的に認められたことになる。ホワイトハウスがLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)を象徴するレインボーカラーにライトアップされ、FacebookなどのSNS上でもアイコンを虹色に変える人が続出したことから、日本でも大きな注目を集めたニュースだ。  歴史的な第一歩を踏み出したアメリカだが、以前、当サイトで「情弱向け?」などと若干失礼な感じで紹介したフィットネスチェーン「プラネット・フィットネス」が、この判決に先立ちLGBTについてある論争に巻き込まれていたのをご存知だろうか。  格安・初心者向けを売りに急激に拡大した同チェーンのコンセプトは、「ジャッジメント・フリー・ゾーン」(無批判区域)。「声出し禁止」、「体型を誇示する服禁止」など、徹底して「初心者がジムでビクビクしないで済む」ルールが特徴だ。そのいっぽうで、「ピザ・マンデイ」(ピザ食べ放題の日)「フリー・ベーグル・デイ」(ベーグル食べ放題の日)など、通常のジムでは考えられないようなサービスも行っており、コアなトレーニング愛好者やネットユーザーからは揶揄の対象になっていた……というのは既報の通り。  そんなプラネット・フィットネスで、今年2月にある事件が起きた。ミシガン在住の同ジム女性会員が、同ジムの女性用更衣室で「男性」が入っている光景に遭遇した。実はこの「男性」はMtF、すなわちトランスジェンダーの女性であり、性自認は女性だが見た目は男性だったのだ。このMtFの女性は、同ジムの会員ではなく、会員である友人のゲストとして訪れた際に、コートと財布を置くために女性更衣室のロッカーを使っていいか尋ねてから使用し、更衣室内の女性を脅かすつもりはなかったと後日の取材で語ったが、当の女性会員は「男が女性用更衣室を使っている!」とジムに苦情を申し立てた。しかし、彼女の苦情に対する受付係の返答は、「本人は自分を女性だとみなしている。当ジムでは自分が当てはまると思う性別の更衣室に入ることができる」というもの。女性会員はプラネット・フィットネス社の本部にもこのことを伝えたが、同社の返答は「ジムは『ノー・ジャッジメント・ゾーン』であり、該当の人物に女性用更衣室に入らないように指示することはない」とこれまた毅然と突っぱねたのである。  その後も女性会員は同ジムに通い、更衣室の女性会員たちに「警告」を続けていたが、4日目に「ジムの理念に反している」として会員資格を剥奪されてしまったのだ。  一連の出来事はアメリカでも賛否がわかれ、議論の対象になっている。本紙も報じているように、アメリカではトイレの男女共用化なども進んでおり、こうした問題は今後も起きてくるかもしれない。  しかし、本記事で注目したいのはTG会員へのクレームに対する「プラネット・フィットネス」の一貫して変わらない姿勢である。 「ピザ・マンデイ」などと硬派なトレーニング愛好家からすればふざけているかのようなサービスを提供する「プラネット・フィットネス」だが、自身が掲げる「ジャッジメント・フリー」というコンセプトについては決して口だけではないという硬派な姿勢を示したのである。 <取材・文/HBO取材班>