photo by Rodrigo Menezes (CC BY-SA 3.0)
厚生労働省の発表によると、2015年5月の毎月勤労統計調査(速報、事務所規模5人以上)で、労働者1人当たりの平均賃金を示す「現金給与総額」は、前年同月比0.6%増の26万8389円となり、2か月連続のプラスとなったものの、物価上昇には追いつかず実質賃金は25か月連続のマイナスとなった。
7月も製粉大手の日清フーズ、日本製粉、昭和産業は7月1日から家庭用の小麦粉、てんぷら粉、パスタなどを最大8%値上げするほか、日用品や食料品を中心に値上げが続いている。
実質賃金の低下はデフレ脱却の際には見られる現象であり、いずれ出口があるとも言われているが、庶民の生活が目に見えて改善するところには至っていないのが現状だ。
消費税増税や円安によって今ひとつ景気回復の実感が得られない中、かつて低価格を武器に一斉を風靡した発泡酒市場が回復し、さらに好調に推移している。
1990年代に市場を席巻した発泡酒市場だが、2000年代後半から第三のビールなど低価格商品の細分化により低迷しつつあった。それが、昨年7-9月期の発泡酒市場は12年ぶりに回復したのである。
その起爆剤となったのは、プリン体・糖質ゼロなどを売りにした機能性発泡酒のヒットだ。その流れは今年1-3月期も続いており、業界団体である発泡酒の税制を考える会の発表によれば1-3月期の発泡酒市場は前年比100.4%と堅調に推移している。
そして、この復活の流れは、機能性以外の発泡酒にも波及しており、1998年の発売以来発泡酒市場を牽引してきたキリンビールの「麒麟淡麗〈生〉」を、味覚・パッケージ、そして名前もフルリニューアルして今年の2月に登場した「淡麗極上〈生〉」は、4月の売り上げが昨年同月の麒麟淡麗〈生〉対比で約108%を記録するなど好調な売れ行きを見せている。リニューアル後(直近3か月)は、ユーザー数が昨対比148%増と驚異的な伸び率を記録していることからも、機能性以外の発泡酒にユーザーの関心が向かっていることが明らかだろう。
実質賃金が伸びず、景気回復が庶民の元まで降りてきていない現状において、コクやキレを増した発泡酒の存在は庶民にとっては心強い。健康志向の機能性のみならず、技術革新によって味がブラッシュアップされていることもあり、発泡酒市場復活の流れは今後も続きそうだ。
<取材・文/HBO取材班 photo by
Rodrigo Menezes (CC BY-SA 3.0) >