激変する新卒採用。リクナビはどう変わるのか?

「リクナビ」や「マイナビ」といった”就職ナビサイト”はもはや就職活動とはきってもきれない存在となっている。たとえば昨年度「リクナビ2015」に登録した学生は70万人程度とみられているが、この数字は2015年3月卒業見込み学生、約86万人(厚生労働省「平成26年度『大学等卒業者の就職状況調査』」)の約87%がリクナビに登録していたことになる。

写真はイメージです。

 一方で、インターンシップやOB・OGによるリクルーティングといった採用方法の多様化や、ひと昔前にはリクナビの独壇場だった掲載社数でマイナビがトップになるなど、業界自体も変化の兆しを見せている。  2016年卒の就職活動は選考のスタートが4か月後ろに倒れ、面接などの「選考活動」の開始は8月1日以降という協定が結ばれた。このことは就職活動にどんな影響を与えているのか。株式会社リクルートキャリア、社外広報グループの宮村収氏に就職活動の現状とその中で就活ナビサイトが果たす役割について話を聞いた。

就職戦線2016の変化

「今年の就職活動における最大の変化は、やはり”繰り下げ”ですね。当社が2015年2月に発行した『就職白書2015』によれば、企業の30.5%が8月に採用面接を行うと回答しています。昨年度の面接・採用のピークが3~4月でしたから、繰り下げの傾向は明らかです」  実際には、政府方針に基づく経団連の指針を破り、すでに面接や内々定を出す青田刈り企業の存在も聞こえてくるが、いっぽうで指針通り、選考活動を後ろに倒す企業も多数あるという。では、実際にはどんな影響が出てきているのか。 「大きくは2点あります。まず、採用期間が短くなりました。就職活動の開始時期が3か月繰り下げになっても、2016年4月という入社時期は同じ。企業も学生もより短い時間で選考に臨む必要があります。もう一点は学生間の情報格差です。昨年までの就活解禁日は前年の12月。企業の生の情報や面接対策などで現役の先輩という情報源が役に立っていましたが、3月となると先輩たちに学校で会うことはほぼありません。早期にインターンやOB訪問を積極的に行っている学生と、そうではない学生との間では、予備知識や意識については大きく差が出てきます」(宮村氏)

「自分の持ち味」を活かせる会社を探すために

 めまぐるしく変化する求人業界でリクルートキャリアは具体的にどんな取り組みをしているのか。 「従来から行っている職種・業種ごと、エリアごとのきめ細かい施策の策定などに加えて、リクルートキャリアが今、力を入れているのが利用者である学生に表示する企業情報の抽出機能の進化です。リクナビ上での行動履歴や登録情報などを総合的に判断して、登録されている学生一人ひとりにとってより有益と思われる企業情報に、より効率的に出会うことが出来るよう、企業情報の表示方法に加え、表示にあたっての企業情報の抽出の精度を高めるためのシステム開発に力を入れています。もちろんサイト上だけでなく、直に業界や企業について知ることができる合同企業説明会も開催しており、3月1日以降年間で大小194回実施・予定しています。ただし、学修を妨げないよう学事上の休日のみの開催としています」(宮村氏)  さらに、リクナビは学生の就活のあり方自体にも一石を投じている。 「キーワードは『効率化』です。エントリーシートを1枚書くことで複数の企業に提出できる『OpenES』のシステムやスケジュール管理ができるスマートフォンアプリの提供など、効率化できるところは積極的に効率化していくための施策を進めています。その分、学生・企業ともに、たとえばface to faceの面談や職場体験など、「ここなら頑張れる」「この人なら活躍できる」といった確信を深める活動に時間を使っていただく。これも当社が提供できる価値だと考えています」(宮村氏)  冒頭に述べたように、近年の就活市場においてはマイナビの競争も激化し、リクナビを取り巻く環境も変化している。そのなかで「リクナビならでは」の価値をどういうものだと考えているのだろうか。 「当社は、一人ひとりの『自分の軸となる価値観』と『かけがえのない持ち味』を何より尊重することをミッションとしています。誰もが『自分の持ち味』を活かして働ける職場との出会いのお手伝いをする。サービスも施策もそのために設計しています。リクナビ2016のグランドオープンの時点の掲載社数は1万1870社。リクナビでは、過去最高の掲載社数です。新卒求人の需要はおよそ70万人と言われていますので、当社の価値をお伝えすべき企業はまだまだ多いと考えています。ただ、もっとも重要なのは採用された人材が企業でいきいき働き、活躍すること。当社も新入社員の心理状態を可視化する『ReCoBook』のようなサービスを提供することで、より適切な周囲からのサポートを可能にし、長いスパンで見た企業と学生のマッチングの一助となればと考えています」(宮村氏)  競合について「各社が切磋琢磨することで新卒採用の業界全体がより向上することにつながれば」と語る宮村氏。各社がより良いサービスを開発することが、企業・学生双方にとってより納得できる就活に繋がる。 <取材・文/市井和夫>