今秋上場予定の日本郵政はマーケットの波乱要素

日経平均の12連騰から「バブル」も意識され出した日本経済。確かに株式市場は好調だが、実は先行き不安を駆りたてる悪材料もある。マーケットの裏の裏まで知り尽くした闇株新聞が注目ニュースを総ざらい!

低収益体質の日本郵政は“親子”で上場ゴールか

西室泰三日本郵政社長

現在、ゆうちょ銀行の社長も兼務する西室泰三日本郵政社長。日本郵政が保有するゆうちょ銀行株、かんぽ生命株は保有割合が50%程度になるまで段階的に売却する予定

 今秋にも上場予定の日本郵政は株式市場にとっては波乱要因となりかねません。  上場に際しては日本郵政と子会社のゆうちょ銀行・かんぽ生命の3社が同時上場する予定ですが、親会社が上場した後に子会社が上場する、ないしは上場企業が上場企業を買収して親子ともに上場企業となるという例はあっても、親子同時上場というのは前代未聞です。むしろ、近年では利益相反が問題視されがちなため、親子上場を解消するケースのほうが多いのです。  それにもかかわらず親子上場を強行するのは、日本政府が東日本大震災の復興財源として4兆円の予算を「先食い」してしまったからです。これは日本郵政のリリースを見ても明らか。「郵政民営化の推進、復興財源への貢献及び経営の自由度確保等のため」と上場の目的を公言しているのです。  復興財源の補てんが最大の目的だとすれば、この親子上場は大きな問題をはらんでいます。“上場ゴール”となりかねないからです。昨年12月に上場したソーシャルゲーム大手のgumiが上場2か月半後に通期の業績見通しを13億円の営業黒字から4億円の赤字に下方修正して投資家の反発を買ったのは記憶に新しいはずです。さすがに同様のことが起こるとは思えませんが、民業に比べて有利な立場にありながら、同業他社に劣る日本郵政グループの収益の低さが気にかかるのです。  信書業務をほぼ独占し、メール便などの類似業務においては民業に対してあからさまな法的措置で妨害しておきながら、郵便事業の純利益はわずかに154億円です。しかも、郵便・物流事業に関しては103億円の赤字で、ゆうちょ・かんぽの金融窓口業務でかろうじて黒字になっているのです。売上高が日本郵政の半分しかないヤマトHDの純利益375億円と比較すれば、その収益性の低さは明らかでしょう。

郵便、ゆうちょ、かんぽいずれも低すぎる収益力

 ゆうちょ銀行も同様です。’15年3月期末時点の貯金総額は177.7兆円。総資産は205.8兆円もありながら純利益は3694億円にとどまりました。これに対して、同じ期末時点で預金総額153.3兆円、総資産286.1兆円の三菱UFJフィナンシャルグループの純利益は1兆337億円と日本郵政の3倍近くもあったのです。詳細は省きますが、同じようにかんぽ生命の収益率も、総資産が半分程度の第一生命の3分の1にとどまりました。すべての分野において、日本郵政のビジネスは低収益なのです。  このことは主幹事証券団も認識しています。だからこそ、直近時価総額が三菱UFJ12.7兆円、第一生命2.6兆円、ヤマトHD1.1兆円に達しているなかで、主幹事証券団は日本郵政の時価総額を7.9兆円と試算しているのです。民営化後に上場したNTTやJTなどは企業努力の跡が見られましたが、日本郵政.ゆうちょ.かんぽの3社はどうなのでしょう? どうも低収益体質のまま民業を圧迫し続けるような気がしてなりません。
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