停電でも大丈夫! 電気に頼らない「太陽光照明」
日差しが注がれず昼間でも暗い1階の部屋、あるいは大きな工場などでは、照明を付けなければとてもじゃないが仕事などできない。ところが、そんなくら~い室内を、電気に頼らず明るくする方法があるのをご存知だろうか?
それが「太陽光を利用した照明」だ。
太陽の光を利用した「明かり取り」という意味では、昔から天窓がよく用いられてきた。ところが、天窓は日差しが届く角度の時しか明るくないし、夏は熱も一緒に取り込んでしまうため部屋が熱くなってしまう。
「太陽光照明」とは、天井などからパイプを引き、太陽の光をうまく取り入れて反射させる仕組み。そのため太陽が移動したり曇っていたりしても充分な明るさを保つことが可能だ。熱や紫外線を取り込まず光だけを取り込むため、熱さや寒さに影響することもない。天井からパイプを引いてくることで、1階の暗い部屋を照らすことも可能だ。もちろん日没後は暗くなるが、内部のLEDライトを付ければ通常の照明になる。
資生堂は2009年、この太陽光照明を埼玉の物流倉庫に設置した。その結果、年間100万円以上の省エネになっただけでなく、従業員も以前より室内がずっと明るくなったと喜んだ。また、予想もしていなかった東日本大震災による計画停電の際にも役立ったという。そのため震災の後では、デパートなど商業施設でも注目されてきている。
外国では、もっと簡単な“手作り太陽光照明”が活躍している。例えば、貧困層が暮らすブラジルのファベーラ(スラム街)では、住居が密集して昼でも暗い家がほとんどで、しかも照明代を払うお金はない。そこでペットボトルを使って作った太陽光照明が広まっているというわけだ。これを設置した家庭では、生活や仕事が格段にやり易くなったという。
日本では、エネルギーの話といえば必ず電気のことだと思ってしまいがちだが、世界では必ずしもそうではない。電気のいらない照明があることはもっと知られて良いだろう。
<取材・文・写真/高橋真樹 著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など>
太陽光を有効利用した「電気の要らない照明」
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
『ご当地電力はじめました!』 地域の電力は自分たちでつくる!各地でさまざまな工夫をこらして、市民主導の「ご当地電力」が力強く動き出しています。 |
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