“市民派”市長が次々と“変節”、地方自治が危機的状況!?

 今年4月の統一地方選挙では、投票率が軒並み最低記録を更新した。無投票で首長や議員が再選された自治体も多い。私たちにとって最も身近な政治であるはずの地方自治だが、多くの人にとっては関心外なのだ。  学校や図書館、道路整備、水道、ごみ処理、社会保障等々、自治体が提供する公共サービスの恩恵と無縁な人はまずいない。当たり前だが、その公共サービスの基礎となる自治体の年間予算は、首長を交えた議会の審議を経て決められる。そうした手続きが半ば「他人任せ」の状態で行われているのが今の地方自治、と言っても過言ではない。

“市民派”首長、就任早々に公約撤回

東久留米市役所(ウィキメディア・コモンズから引用)

 そんな地方自治の現状を描き出したのが、この春刊行された『議会は踊る、されど進む』(谷隆一著、ころから刊)だ。舞台は東京・東久留米市。郊外の静かなベッドタウンで、大型ショッピングセンターの誘致計画をめぐり、地元住民や商店主らが大規模な反対運動を展開する。2009年、折からの政権交代ブームの余波も受ける形で「誘致見直し」を公約に掲げる革新市長が当選した。  ところが市長は何と、当選直後に公約を撤回。市民との溝が深まり、市議会でも少数与党さえ敵に回して孤立。2012年度の市予算案は、市議会で4度否決された後、400億円近い年間予算を市長が独断で決める「専決処分」に踏み切る、という異例の事態を迎える。  誘致計画容認の背景には、撤回した際の財政負担に耐えられない恐れがあるなどの「やむを得ない」事情もあったが、やはり市長の力量不足は否めない。しかし一方で、そのような人物を当選させた「市民」の側の問題も本書は描く。  就任早々公約をほごにし、市の予算を専決処分で決めた市長に対して、住民は結束してリコールを求めることをせず、市長は4年の任期を全うした。また公約が裏切られる中、多くの住民が市政への関心を失ってしまった。革新市政は「一過性のブーム」だったかのようだ。  いわゆる“市民派”首長のつまづきは東久留米だけではない。2013年に「脱ハコモノ行政」を掲げて当選した千葉・八千代市長も、就任間もなくハコモノ推進に“変節”。地方自治は首長と議会の「二元代表制」だが、野党が多数を占める議会の抵抗が強く、市長を選んだ民意が反映されにくい点も共通している。  さらに主権者である住民が行動を起こさなくても、行政が滞りなく機能してしまうことも、地方自治への無関心を助長する一因だ。そうした「他人任せ」は果たして「民主主義」と呼べるのか、と問うことさえ虚しいのが今の地方自治、ひいては国政をめぐる危機的状況だ。 <取材・文/斉藤円華>
議会は踊る、されど進む

狛江と小平の事例から「その再生」を描く