ファイブフィンガーシューズ。編集部Oの私物である
「素足で走ると怪我をしない」「足が健康になる」などという謳い文句で一時期ブームになった「ベアフットランニング」(素足によるランニング)。
この効果を大々的に謳い、5本指ソックスのように指をわけて履ける靴「ファイブフィンガーズ ミニマリスト」を販売していたビブラムUSA社が、健康効果を誇張しているとして集団訴訟されていた件で和解することで合意に達した。
ビブラムUSA社は、2009年3月21日以降に同社のファイブフィンガーシューズを購入した人に対して購入価格94ドルの内30~50ドルを返金、残りは米国の患者支援団体アメリカ心臓協会に寄付される。この返金の総額にして350万~375万ドルになるという。また誇張した広告表現をやめると発表した。
しかし、その一方で、同社は「和解は訴訟が長引かないようにするためであり、原告団の申し立てについてははっきりと否定するし、これからも否定し続ける」と主張。怪我や健康を損ねるという主張については真っ向から否定した。
元々、ゲルやクッションを入れた靴が、足の自然な動きを損ねて怪我をしやすくなることを証明するという研究結果は確かに存在していた。それが「自然な動きを取り戻せる」としてベアフットランニングやファイブフィンガーシューズに人気に繋がったわけだが、ここに来てベアフットランニングもまた同じように足を怪我する可能性があることを示す研究結果が出てきたのだ。その研究結果ではクッション性のある靴から素足に急に変えると怪我をしやすくなると主張されている。原告団の主張にはこの研究結果も背景にあるという。
ただ、この点についてビブラムファイブフィンガーを擁護する声も多い。
愛用するランナーの間では「初めてベアフットランニングをする場合は次第に距離を伸ばすようにすることは常識的なこと。ベアフットになれば健康になるんじゃなくて、ベアフットで”正しく走れば”健康になるということ」という声も挙がっている。
また、ウエイトトレーニング愛好家の間でも、「クッションの高い靴はスクワットやデッドリフトをやるときに妙な負荷がかかるので、ファイブフィンガーズのような靴がありがたかったんです。指が自由に動くから踏ん張れるし」という声が挙がっている。
ビブラムファイブフィンガーズを日本に輸入しているBarefootinc Japanに日本での対応を聞いてみると「日本法人としては米国の訴訟で問題になったような誇張表現についてはもとから取っていないので、特に返金対応などは予定しておりません。今後も、正しい使い方の周知を徹底させていきたいと思います」とのことだった。
<取材・文・写真/HBO取材班>