ついに始まった、日本会議による『改憲へのカウントダウン』――シリーズ【草の根保守の蠢動 第6回】
2015.04.09
前回(http://hbol.jp/33119)の「日本会議の源流を作った男」で紹介した椛島有三と日本青年協議会。
椛島有三は現在、日本会議の事務総長であると同時に、出身母体の日本青年協議会の会長でもある。
日本青年協議会のWEBサイトには、これまでこの団体が辿ってきた活動歴が年表形式で詳細に語られている。(http://www.seikyou.org/nihonkyogikai.html)
この年表を見れば、70年代以降につぎつぎと立ちあらわれた「日の丸君が代義務化」「靖国公式参拝」「教科書」「教育基本法」などなどのほぼすべての右傾化運動の背後で事務局として機能していたのが日本青年協議会であることが一目瞭然だろう。
2015年現在も、日本青年協議会は、日本会議の事務局として、運動の立案、リソース配分、進捗の管理などの機能を果たしている。
前回予告どおり、日本会議事務総長椛島有三と彼の出身母体である日本青年協議会の来歴や現在の状況を、資料をベースにしながらお伝えしたい……とこであるが、悠長なことを言ってはいられない事態が発生した。
日本青年協議会の月刊機関紙「祖国と青年」の最新号が筆者の元に届いたのだ。
いかに巨大組織「日本会議」の事務局を担う団体の機関紙とはいえ、最新号の出来そのものはなんのニュースでもない。問題は、最新号の中身である。
まずは、日本青年協議会の機関紙「祖国と青年」2015年4月号の表紙をご覧いただきたい。
長谷川三千子(埼玉大学名誉教授・日本会議代表委員)による「憲法9条を解剖する」という講演録や、諌山仁美なる人物(明成社=日本会議関連の著作を出版する会社の社員。昭和61年生まれ。この界隈では「若手」に属する女性だそうだ)による、「『おしゃべりカフェ』で憲法改正の女性の輪を広げよう」という記事など、改憲運動に関する記事が目白押しである。
また、表紙記載はないが、巻頭特集は「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の2015年度総会についての報告記事だ。
「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の年次総会は3月19日に開催された。
政界からの出席者は次世代の党から平沼赳夫、自民党から古屋圭司、民主党から渡辺周、維新の会から馬場伸幸という錚々たるメンバー。「1000万人賛同者獲得運動の推進」「地方議会での意見書採択運動の推進」などの2015年度の運動方針を採択するとともに、2015年11月10日に開催予定の武道館での大会までに、「500万筆の署名の獲得」「衆参合わせて479議員の賛同獲得」「35都道府県での意見書採択」を当面の目標として公表された。
この運動方針は先日報道により明らかになった、自民党の2015年度運動方針(時事通信 2015/2/17 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201502/2015021600661&g=pol )と酷似している。報道によると自民党は今年度、「憲法改正を党是とする保守政党としての誇り」を全面に打ち出し、国会議員一人あたり4000人の党員獲得をノルマ化するなどを基本とした運動方針を採用するとのことだ。
おそらく、自民党の運動方針は、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の運動方針と共同歩調をとることを前提に立案されたものなのであろう。
このように、巻頭特集からだけでも、日本会議/日本会議の憲法改正運動別働隊である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」/日本青年協議会 の改憲に対する並々ならぬ決意が窺い知れる。
しかし、今月号で異彩をはなっているのは、この巻頭特集ではない。
それに続く、漫画コーナー・「憲法のじかん」だ。
「憲法のじかん」は「祖国と青年」名物の漫画コーナー。毎月、鈴木由充編集人みずからが担当している(漫画コーナーでのペンネームはひらがな表記の「すずきよしみつ」)。「青木協子」なる女性キャラクターが日本青年協議会や日本会議の運動を漫画で表現するというのがおきまりのパターンだ。漫画コーナーなので、通例では巻末に掲載されることが多い。
だが、今月は違った。
巻頭特集「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の年次総会報告記事の直後、基調演説を行う櫻井よしこの大写しの写真が掲載されているまさにその次のページから、4月号の「憲法のじかん」は始まっている。
今月はやる気だ。
表題は『改憲戦艦ヤマト』。なみなみならぬやる気を見せる今月の「憲法のじかん」は、宇宙戦艦ヤマトのパロディー。今月の青木協子はヤマトの乗組員に扮している。
艦長が「改憲砲発射用意!!」と号令をかけるところから、一コマ目が始まる。
青木協子はスコープを覗き照準を合わせる。しかしそこに「デス将軍」率いる「護憲艦隊」が来襲する。ヤマトが「改憲砲」の発射準備に入ったことを察知したデス将軍は、護憲艦隊に「全砲門開け!ヤマトを沈めろ!」と号令をかける。被弾するヤマト。青木協子は機関士に「賛同者エネルギーの充填はまだなの?!」と詰め寄る。「300万 400万 。。。500万!改憲砲撃てます!」と報告する機関士。しかし「賛同者エネルギー」が1000万に到達するまで発射するなと艦長は命じる。1000万の「賛同者エネルギー」が充填されたところで、改憲砲の発射だ。全滅する「護憲艦隊」。やったー!と喜ぶ青木協子。
⇒【画像】はこちら http://hbol.jp/?attachment_id=33171
……。実にくだらない。よく2015年という時代にこんな陳腐な「ヤマト」パロディーを恥ずかしげもなく描けたものだと思う。こんなもの誰が読むんだ。と、一笑に付そうとしたとき、最終コマを目にして、戦慄を覚えた。
⇒【画像】はこちら http://hbol.jp/?attachment_id=33172
「憲法改正まであと四百八十日」…
とうとう、日本青年協議会は、改憲のカウントダウンを開始したのだ。
奥付によると「祖国と青年」4月号の発売日は4月1日。2015年4月1日から480日後といえば、2016年7月25日。参議議員任期満了の日だ。
この日までに参院選は実施され、新しい参議院議員が就任する。
来年の参院選挙が改憲の天王山になるというのは、大方の識者が指摘しているところだ。
いかに安倍政権が改憲を強く志向するとはいえ、現在の参院の状況では改憲の発議さえできない。ゆえに、安倍政権は是が非でも次の参院選挙に勝利するために必死の攻勢をかけるだろう。現に、安倍首相本人が「改憲発議は来年の参院選開けが常識」と発言している(http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/04/shinzo-abe-constitutional-amendment_n_6617464.html)
「憲法改正まであと四百八十日」とはまぎれもなく、このタイムテーブルを指したものだろう。つまり、日本青年協議会は来年2016年の参院選挙に勝利し改憲を実施するぞと宣言しているのだ。
冒頭に引用した日本青年協議会の年表を今一度ご確認願いたい。日本青年協議会は、「日本を守る会」の事務局であった40年まえからいま現在にいたるまで、手堅い運動手法で自分達の運動目標を着実に政策化しつづけている。彼らが取り組んだ運動のほぼ全てが、立法化あるいは政令化され、現実のものになっている。
その彼らが、「改憲」という最終目標にむけ、カウントダウンを始めた。
はたして、「護憲艦隊」は、百戦錬磨の日本青年協議会が率いる「改憲戦艦ヤマト」に、立ち向かうことができるのだろうか?
<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>
「改憲特集」を組んだ日本青年協議会の機関紙
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