『コンピュータにはこれまで以上の革命的な発展が見えてこない』Unicodeの生みの親が語る

リー・コリンズ氏

Unicodeの生みの親、リー・コリンズ氏

 4月5日、「ユニコード」の生みの親の一人であり元Appleの技術者であるリー・コリンズ氏(元アップル社)が来日し、東京で開催されていた、ダライ・ラマ法王と仏教研究の第一線で活躍する研究者らとの対話イベント「GOMANG ACADEMY OPEN SYMPOSIUM ~伝法の未来を考える~」(主催:一般社団法人 文殊師利大乗仏教会)に出席し、来日中のダライ・ラマ14世にこれまでのユニコードの取り組みについて紹介した。 ⇒【前編】「元Apple技術者、リー・コリンズ氏がダライ・ラマ法王の前で語った世界中の文字と言葉への思い」

コンピュータにはこれまで以上の革命的な発展が見えてこない

「ぼくは人生で二人の偉大な人物に直接会えたよ。一人はスティーブ・ジョブス、そしてもう一人はダライ・ラマ法王だ」  発表を終えたリー氏は興奮気味に言葉を続ける。 「昔、『THINK DIFFERENT』というアップルのキャンペーンがあったよね。渋谷や銀座などに、ダライ・ラマ法王の大きなポスターが貼ってあった。私たちの仕事はとっても地味で、普通の人に簡単にわかるものではなかったけど、あのダライ・ラマ法王に、自分が生きているうちに直接報告できたのはよかったよ」  そんなリー氏は、敬愛していたスティーブ・ジョブズがいなくなったこともあり、3年前には永年勤めていたアップルを退職した。 「コンピュータのテクノロジーは自分が関わったこの数十年ですごく革命的に進化したんだ。でも、いま、ふと考えてみると、これまで以上の革命的な発展が見えてこないことも確かだよね。これはぼくがアップルを去った理由のひとつなんだよ」  今月下旬に発売が予定されているアップル・ウォッチ。もちろんその文字盤でこれから私たちに時を告げてくれる文字が世界中の様々な文字で読み書きできるのも、リー氏の功績のひとつである。  現在、リー・コリンズ氏は、悉達文字(しったんもじ・お墓などに書いてある古いインドの文字)のフォントやキーボードの開発、今秋、本格的に日本上陸が迫る“映像配信の巨人”「ネットフリックス社」の国際化担当顧問などを務める傍ら、再び大学に戻り、仏教を学びつつ、余暇はハイキングを楽しむなど、悠々自適に暮らしている。  一線を退いた世界有数の偉大なエンジニアは、いつも物静かで、深く遠くを見つめているようだ。このダライ・ラマ法王との対面を後にした彼は、桜の咲く京都をひっそりと訪れ、帰国するという。 <取材・文/野村正次郎+小原美千代>