観光客増でトラブルも増加。中国人観光客のマナー違反にはどう対応すべき?
春節の「爆買い」が話題になったが、円安の影響を受けて中国人観光客の訪日はその勢いが弱まる気配がない。
日本国観光局によると2014年訪日外客数は、13,413,467人(前年比29.4 %増)と初めて1300万人を超えた。この数年、韓国に差を付けられていたが、一気に追いついた感がある。訪日外客数の中で、訪日中国人は、2,409,158人で前年比83.3%と昨年からほぼ2倍増となる。そう、事実、中国人は日本人が思っている以上に激増しているのだ。
日本の桜は中国でも有名で、これからは花見などに訪れる中国人観光客の増加が予想され、それを巡るトラブルなども報じられている。
●花見の中国人マナー悪化 名所で中国語表記ルール配布も検討(週刊ポスト)http://www.news-postseven.com/archives/20150321_310074.html
こうした中国人観光客のトラブルは日本だけではない。中国人のビザが緩和された影響で、韓国やタイ、台湾、香港へも中国人旅行者が急増し現地でのトラブルに発展していることもメディアで報じられるようになっている。
なぜこうしたトラブルが絶えないのか。
中国在住の日本人はこう語る。
「誤解を恐れずに言うと、彼らは無知なだけで、相手に迷惑をかけようとなんて考えておらず、悪気も全くないんですよ。本能に従って行動したいままに動いているというか。その昔、日本の農協観光団が海外で悪評高かったのと同じように、田舎の人が急に世界に出ちゃっただけだけでコントみたいな喜劇になっているというか……」
日本在住が長い中国人も同様の意見だ。
「日本滞在が長い留学生や上海など都会から来ている富裕層の観光客からは、自国民のマナーの悪さに辟易する声が出ているように、外の文化を知っていればわかるんです。ただ、長年海外に出ていなかったような田舎の人も観光に訪れるようになったので余計目立つようになったと思います」
確かに、中国人観光客で賑わう日本の空港での通路でスーツケースを広げたり禁煙エリアで喫煙したり、銀座の観光バス集合場所でゴミを捨てる中国人の姿には、日本人だけでなく日本在住の中国人でも眉を顰める人も少なくない。
「繰り返しますが、彼らに悪気は一切ない。彼らにとってこれが普通、当たり前で、そもそも、中国国内では、バスで大声で電話しても誰も注意しない。迷惑だと感じる価値観が違うんです。そうした価値観の違いを放置して、何も対策を講じないのは双方にとってデメリットばかりになります。他の外国人旅行者へのサービスレベル低下とリピート率に影響が出たり、注意もされないと中国と同じでいいんだと誤認して同じ振る舞いが連鎖していく。そして、こうした振る舞いにカリカリして注意もできないままでは日本側の現場スタッフのメンタルヘルス不調の要因となるってことです」(前出中国在住日本人)
ではいったいどうすればいいのだろうか?
「中国社会では、信賞必罰が前提なんです。ルールがあっても見ていなければ誰も守らないのが当然のため、1分でも遅刻すると罰金などを社内ルールで設ける企業が一般的で、ホテルでも備品毎に罰金が書かれており、盗難確認のためチェックアウトに時間がかかることがあるほどです。そのため、言葉は悪いですが”こんなことはしないだろう”とか”言わなくてもわかってもらえるだろう”といった考えや”お客様は神様です”という過剰な顧客優先主義は捨てて、ルールを明示して違反していたら注意すればいいんです。悪気はないし、根は純朴な田舎の人なんで、逆ギレしてコンビニ店員を土下座させるような人はむしろ少ないと思います」(同)
前出の花見の問題でも中国語の注意文を掲げ、できれば違反をしている人に指摘する人を常駐させればいいという。
「ただ、英語は効果が低いです。40代以上の中国人は英単語レベルでもわからない人が多い。NO SMOKINGでもわからないこともあるので、中国語なりイラストを添えるのが望ましいでしょう」(前出日本在住中国人)
嫌中感情が高まっているとはいえ、観光立国を目指す日本にとってはこれだけたくさん訪日してくれる中国人観光客は大切な存在でもある。
双方の無理解がトラブルの原因になるのであれば、日本を熟知する知日派中国人や中国を知る日本人の力を借りるなどして、こちらのマナーなどを知ってもらい、気持よく観光してもらうことが大事なのではないだろうか。グローバル化は何も外へ行くことだけではない。内の意識を変えることも1つのグローバル化なのだ。
<取材・文・撮影/我妻伊都>
ハッシュタグ