安倍昭恵首相夫人、防潮堤見直しに動かない夫への不満を漏らす!?――国連防災世界会議
安倍昭恵首相夫人が、3月14・15日、仙台で開催された「国連防災世界会議」に参加した。いくつかの関連シンポジウムで挨拶し、動き始めた若者にエールを送りつつ、自らも防潮堤見直しを訴えたのだ。
仙台で開催された「国連防災世界会議」に昭恵夫人は参加。2日目(3月15日)の若者関連のシンポジウムで参加者にこう呼びかけた。
「自分たちにとってどんな地域がいいのか。どんな生活が幸せなのか。どんな未来を作っていきたいのか。この震災復興を通して考えていただきたいと思います。自分たちの都合の中で発言しないといけない大人たちがたくさんいます。
そういう大人たちの目や心を開くのは、やはり皆様(若者)の力です。どうか、これからも日本がいい国になるように、お力をお貸しいただきたい。そのために主人(安倍晋三首相)も頑張っていくと思います」
しかし現時点では、安倍政権が防潮堤見直しに方針転換する兆しは全くない。昭恵夫人が最も問題視してきた気仙沼市小泉地区の巨大防潮堤(事業費230億円)も去年秋に着工が決定。まさに工事が始まろうとしているのだ。
そのためか、昭恵夫人は15日のシンポジウムを聞いた後、次のような挨拶をしていた。
「防潮堤問題にずっと関わってまいりました。主人にも何度か意見を言ってまいりましたけれども、一度決まってしまうと見直されない。非常に歯がゆい思いをしてきました」
夫の安倍首相に何度も防潮堤見直しを訴えているというのに、建設は着々と進んでしまう。話を聞き流すだけで何も動こうとしない夫への不満が、つい漏れてしまったのだろうか。
昭恵夫人の訴えは、さまざまな専門家の話を聞いたうえでの結論だった。例えば清野聡子・九州大学准教授もその専門家の一人だ。清野准教授は同シンポジウムで、日本の旧態依然とした制度を問題視するプレゼンを行った。
「日本は社会の『制度』が追いついていかないため、海岸のすぐ近くに防潮堤を作ることになってしまう。インド洋津波の後にインドが選択したのは、砂丘の後ろ側まで防潮堤をずらして海辺の自然を残すというやり方でした。(災害に学んだインドに比べて)私たちは日本の大地に住みながら、果たしてこの100年に賢くなったのだろうかと考えると、切なくなります」(清野准教授)
気仙沼市小泉地区の防潮堤見直しを求める地元高校生もこう訴えた。「子供たちが親しんだ干潟はなくなろうとしています。小泉地区には200億円以上のお金をかけて、幅90メートル、高さ14.7メートルの大きな防潮堤が建とうとしています。いま被災地では多くの場所で防潮堤が作られています。『海と生きる』と言っている気仙沼にも、数多くの防潮堤が建設されています」
昭恵夫人は関連シンポジウムを含めて何度もスピーチに立ち、「若者たちに期待する」旨の発言を繰り返した。
「2万人もの方々が犠牲になられた東日本大震災ですが、これを無駄な犠牲にしてはならない。なかなか(しがらみのある)大人には変えられないところがあるので、子供たちが声をあげて、おじいさんやおばあさんや大人たちに『自然、環境を残して下さい』ということを訴え続けてもらいたい。私も含めて、わかる大人はサポートしていきたいと思っています」(昭恵夫人)
昭恵夫人が夫の安倍首相に期待しているのは、“大人の都合”を乗り越えて、こうした専門家や若者世代の訴えを政治に反映させることなのだ。
取材・文・撮影/横田一
夫(首相)に期待するも、防潮堤工事はどんどん進む
「海と生きる」復興が海を壊す暴挙
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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