安倍昭恵首相夫人、高校生の防潮堤見直し案を絶賛――国連防災世界会議

 安倍昭恵首相夫人が、3月14・15日、仙台で開催された「国連防災世界会議」に参加した。いくつかの関連シンポジウムで挨拶し、動き始めた若者にエールを送りつつ、自らも見直しを訴えたのだ。

昭恵夫人「若者たちのみずみずしい感性で未来が作られる」

安倍昭恵首相夫人

安倍昭恵首相夫人

 14日は「世界防災ジュニア会議」で挨拶。主催は「減災産業振興会」。「株式会社グローパス」の高校生CEO仁禮(にれい)彩香さんが設立した一般社団法人だ。  昭恵夫人が仁禮さんを応援し、理事会メンバーに名を連ねていることから出席した。  減災防災のアイデア表彰式の後、昭恵夫人は「防潮堤ですべての津波から守ることができるのでしょうか。日本全国を壁で覆っていいのでしょうか」「環境と生態系が破壊され、海が見えなくなってしまいます。日本人は本来、自然とともに生きてきました」という問題提起を行った。  15日も昭恵夫人は、東北大学で開かれたシンポジウム「沿岸生態系を活用した防災と減災」に参加。最前列に座って、スマートフォンで写真を撮影しながら、専門家や小学生や高校生のプレゼンに耳を傾けていった。そして、次のように高く評価した。 「(仙台市宮城野区の)蒲生干潟を守りたい高校生と、『(気仙沼市)小泉の環境を守っていきたい』という小学生の発言があって、これからは『若者たちのみずみずしい感性によって、未来が作られていくのだな』ということを改めて感じました」(昭恵夫人)  中でも絶賛したのは、「仙台の高校生で考える防潮堤の会」の活動内容を紹介したプレゼンだった。  震災後、国の特別保護地区に指定されている「蒲生干潟」を横切るように防潮堤建設が計画されていることを知った地元高校生グループは「干潟を守りたい」との思いから調査活動をスタート。  専門家や行政担当者の意見を聞いたり、住民説明会に出席したり。景観配慮型の防潮堤が埋め込まれている「葛西臨海公園」(東京都)も視察し、干潟保全可能な「楽しい防潮堤第1案」を作成。そして住民説明会に出席して、その見直し案を説明した。

修正を繰り返した高校生の「防潮堤見直し案」が動き出す

高校生たちのプレゼンに聞き入る昭恵夫人

高校生たちのプレゼンに聞き入る昭恵夫人

 しかし、見直し案に対しては地元住民らから問題点が指摘される。すると、その課題を解決しようと、さらに調査やヒアリングを続けて、見直し案に修正を加えていったこうしたサイクルを繰り返しながら、約1年をかけて完成したのが「第4案」だ。  そこには、干潟保全はもちろんのこと、避難方法を含めた防災機能や歴史遺産活用や観光振興策まで盛り込まれていた。  第4案の骨子は、現行案の防潮堤の位置を内陸側に800mほど移動(セットバック)することで干潟を保全。隣接する海側の土地を防災公園として整備して、中に避難用の高台も造成する。さらに公園に隣接する江戸時代の歴史遺産「貞山運河」を再び開通させ、仙台空港から水上バスを走らせて松島や石巻と結ぶ観光ルートにするというものだ。 「グローパス」も第4案作成に協力。公園用地買い上げのための資金協力を企業に働きかけることも決まっていた(3月17日に実施)。  プレゼン後に感想を聞くと、昭恵夫人からはこんな答えが返って来た。 「(高校生たちは)何回も提案を作り変えて素晴らしかったです。住民集会にも参加する行動力はすごい。彼らの自発的な動きに期待したいと思います。若い人たちのプレゼンを聞いて、大人も変わらないといけないと思いました。(復興の)本質からずれてしまっている大人たちがたくさんいますが、若者たちや子供たちは曇りなくストレートに物事の本質を見ている。昨日も今日も、若者たちの話を聞いてそう感じました。こうした声を大人たちがどう受け止めるのかが、今後の課題だと思います」(昭恵夫人)  夫の安倍首相をはじめ政府関係者が、若者たちや昭恵夫人の訴えを受け止めて、防潮堤見直しを具体化させていくのかどうかが注目される。 <取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数