プロが教える[NISA口座]の新常識

少額投資非課税制度、通称NISA(ニーサ)。1月より導入され、“貯蓄から投資”の流れを作るキカッケになると期待されている。利益に対してかかる約20%の税金を0%にする一見お得な制度だが、導入後に見えてきた新情報が多数。その全貌を明らかにする!

投資信託&積み立て型投資がNISAとの相性バツグン!?

NISA 今年1月にスタートした少額投資非課税制度、通称「NISA(ニーサ)」。日本証券業協会の発表によれば、今年3月末の時点で証券会社のNISA口座数は約421万口座。これに銀行などの金融機関の口座を合わせれば、合計で約600万口座にものぼる見込みだとか。だが、その一方で、開設はしているが機能していない口座、いわゆる“空口座”が約8割近くもあるという。そこで、動き始めたNISAの新常識をプロから教えてもらった。 「スタート前は未知数だったNISAですが、実際に動き始めると、30代から40代の女性を中心に口座の契約数が伸びたと言われています。ただ、始めてすぐに武田薬品などの高配当株を狙って株式に飛びついた人のなかには、2月の株安に巻き込まれて損失を引きずっている人も多いと聞きます。現段階では値下がったときのリスクが高い株よりも分散投資によってリスクヘッジをしやすい投資信託をメインにする利用法が賢いです」  そう語るのは、株式会社フィスコのアナリスト・小川佳紀氏。また、FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社の神戸孝氏は、さらに一歩上の視点からNISA攻略法を分析し、活用術を編み出す。 「いくら『貯蓄から投資へ』と言っても、これまで貯蓄しか経験のない人は、儲かる以上に“損”をしたくないという心情のほうが強い。そこでオススメなのが定額投資による『積み立て型』投資です。投資信託なら中小型の日本株ファンドや世界中の株式に投資を行うファンドがオススメです。長期で見た場合、上下のブレがあり、なおかつ買い始めてから値下がりしたほうが、安くなった分たっぷり仕込めるので、最終的に上がってきたときに実はパフォーマンスがいい。NISAは『積み立て』との相性が非常にいいんです」  一方、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、NISAのシステムをキチンと理解したうえで、割り切りかつ思い切りのよい投資を目指すべきだと語る。 「基本的な話ですが、NISAは利益をあげないと非課税の恩恵が得られません。つまり、儲かってなんぼ。従って短期なら今、上昇トレンドが鮮明に出ている米国株、長期なら今年の頭に急落した新興国の株式を投資対象としている投資信託やETFが狙い目です。どうせ100万円までしか買えないんですし、無難なところを狙うよりは、振り切った投資スタイルのほうがNISAには合っています」

動き始めたNISAを効率よく攻略せよ!

 とはいえ、NISAにはまだまだ課題も多い。 「今後の最大の焦点はやはり損益通算と投資枠の拡大。使い勝手が良くなれば、それだけNISAをやろうとする人もおのずと増えるはず」(小川氏) 「無事に制度が始まり、今は第2ステップ。これから投資未経験者や初心者にどれだけ広まるかがポイントですね。基本的なシステムはしばらく変わらないと思いますが、株価が低迷してくれば、何らかの救済措置やテコ入れが施されるはず」(深野氏) 「現時点での評価は100点満点で60点。ほとんどの人が様子見をしている段階でしょう。今年分の投資期限である12月に駆け込みで商品を購入する人が多くなるのでは」(神戸氏) 【小川佳紀氏】 フィスコリサーチ部アナリスト。中堅証券会社を経て現職。株式市場から為替市場まで、幅広くマーケットをウォッチする。新興市場を中心としたリサーチ力に定評がある若手のホープ 【神戸 孝氏】 FPアソシエイツ&コンサルティング代表。三菱銀行、日興証券を経て、’99年に会社を設立。資産運用に強いFPとして評価が高い。著書に『NISAで儲けろ!』(朝日新聞出版)など多数 【深野康彦氏】 ファイナンシャルリサーチ代表。ファイナンシャルプランナー。テレビ・ラジオ番組などでも活躍。著書に『1万円から始めるETF投資』(日本経済新聞出版社刊)など多数 ― プロが教える[NISA口座]の新常識【1】 ―