株主還元策を実施しそうな狙い目企業は?
2015.03.19
この春、株主還元策を実施する企業が増えそうだ。「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」という2つのコード導入によって、単なる大株主だった機関投資家がモノ言う株主へと変わるためだ。株主還元策を実施しそうな企業を狙え
⇒【前編】今春、「株主還元バブル」が起きる可能性
実際、今年になってからだけでもファナックや九電工、三井住友トラスト、ネクソンなどが自社株買いや増配などの株主還元策を発表し、ストップ高銘柄が続出している。下の表は、今後利益還元の充実が予想される銘柄だ。
「配当性向が低い企業、キャッシュリッチな企業、低PBR企業、低ROE企業が狙い目です」
増配の最有力候補は京成電鉄。
「業績が緩やかな右肩上がりを描いている一方、3期連続で配当が税引き後利益の1割未満にとどまっています。JR東日本や東武鉄道が利益の2割以上を配当に回していることを考えると、株主の増配要求を拒否し続けるのは難しい。また、キャッシュリッチ企業も増配圧力から逃れられません。典型例は任天堂。ファミコン草創期から積み上げた利益剰余金が1兆4274億円にも膨らみ、現金と有価証券だけで9200億円を超える。設備投資や企業買収など企業の成長に使うわけでもなく、ただ寝かせておくだけでは株主の理解を得られません」
PBRが低い企業も、即効性のある株価上昇策として増配や自社株買いに動きそうだ。
「特にPBRが1倍を割ると、事業を続けるより、会社の資産を売却して解散したほうがトクだということになります。これは、市場から不合格の烙印を押されたのと同じ。PBR1倍割れが長引いている企業は株価浮揚を真剣に考えざるを得ない状況に追い込まれているのです。また、経営効率の悪い企業にも効率アップの圧力がかかります。機関投資家に代わって株主総会の議案を吟味する世界最大の助言サービス会社、インターナショナル・シェアホルダー・サービス(ISS)は、ROE5%未満の企業について、今年6月の株主総会で取締役選任議案に反対する方針を決めています」
かくして配当や株価水準、経営効率性が低く、株主への利益還元が不十分な企業の「包囲網」ができ上がった。4~6月の株主総会を前に続出しそうな、駆け込み株主還元に走る企業を狙いたい。
⇒【グラフ】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=28892
●京成電鉄(東1・9009)低配当性向
現在株価:1629円/目標株価:2600円
訪日客増加で成田空港行き好調。不動産も収益底上げ。傘下企業で「東京ディズニーランド」を運営するオリエンタルランドも来場者数は過去最高へ
●任天堂(東1・7974)キャッシュリッチ
現在株価:1万2975円/目標株価:1万6000円
利益剰余金がたっぷりある半面、ゲーム機ビジネスの先行きが不安視されている。経営陣の選択肢は大幅増配か大型買収かの2つしかなさそうだ
●東洋製罐グループHD(東1・5901)低PBR
現在株価:1654円/目標株価:2500円
飲料缶・ペットボトル業界で首位を独走している。海外事業の本格開拓が始まったばかりで、株価は5年後、10年後の成長を織り込んでいない
●コカ・コーライーストジャパン(東1・2580)低ROE
現在株価:2071円/目標株価:3300円
’13年7月に関東などのコカ・コーラ3社が経営統合。重複部門整理など統合後のリストラが一段落し、株主に利益として還元する局面に入ってきた
※株価は3月2日時点
【大神田貴文氏】
株式ジャーナリスト。国内大手証券会社などを経て現職。マーケット情報に精通しているだけでなく個別企業の裏情報も知る事情通。金融、経済政策にも強い
取材・文/株主還元策取材班 チャート協力/楽天証券
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今後、株主還元策を実施しそうな銘柄
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