辺野古新基地建設で海保が「暴力的警備」!?
沖縄県名護市辺野古で始まった米海兵隊新基地の建設。県知事選と衆院選で相次ぎ新基地反対派が当選したが、国は基地反対で結束する「オール沖縄」の構えをよそに、作業を進める。現地の海では抗議する市民と、警備側との緊張が高まっている。
「海上保安庁のほうが危ない。彼らはカメラを取り上げて放り投げたり、仲間を力ずくで海に沈めたりする」
そう憤るのは、市民団体「沖縄平和運動センター」事務局長の大城悟さんだ。
国は現在、新基地が計画されている辺野古沖から大浦湾にかけて、制限区域を囲むオイルフェンスを設置。本格的工事に向けた準備作業を進めている。これに対して大城さんらは連日、約20隻のカヌーを出して抗議を続けるが、警備する第11管区海上保安本部も30隻のゴムボート、10隻以上の巡視船を出して警戒。大城さんによれば、ゴムボートには1隻あたり5人が乗船し、作業船やフェンスに接近するカヌーを排除し、そのつど市民を拘束しているという。
「(海上保安官は)カヌーに飛び乗ってひっくり返し、乗っていた人を海に引きずり込み、沈める。そして海水を飲ませてボートに引き上げ、寒い風が吹く中を濡れたまま2~3時間も放置する。それで体はすっかり冷え切ってしまう」(大城さん)
壮絶な光景が目に浮かぶが、「これだけではない」と大城さんは語気を強める。
「現場の状況を記録し、暴力から身を守るために持っているカメラを奪おうとする。現にある記者はカメラを放り投げられ、海に落ちるところだった。保安官の中には『お前の顔を覚えているからな』と威嚇する者もいる。きっと『誰も見ていない、バレない』という感覚があるのだろう」(大城さん)
こうした状況は『琉球新報』などの地元メディアがさかんに報じているが、本土にはほとんど伝わっていない。
海上保安庁に聞くと、本庁政策評価広報室の担当者は「報道されていることは承知しているが、沈めたり、海水を飲ませたり、などという行為はしていない。制限区域内に入る船艇を規制、排除している」と反論する。
しかし、大城さんは「カヌーは制限区域内には入ってはいない」と語っていた。カヌーでオイルフェンスを乗り越えるのは至難だろう。「それは本当に制限区域内でのことなのか」とたずねると「制限区域に近づく、もしくは入りそうな船艇に対しては制止活動を行っている」と説明した。
また、現地の報道写真では市民が海保によって「羽交い締め」や「馬乗り」にされているように見える。これについても説明を求めると「ケガや器物損壊などの事実はない」と述べ、あくまで「正当な警備活動である」との立場を崩さなかった。
このように、市民と海保とでは主張が真っ向から対立。「もう基地はいらない」という沖縄の民意は、昨年だけを見ても名護市長選、沖縄県知事選、衆院選で繰り返し示されている。本土ではほとんど報道されない、基地建設の現場で起きている事実をもっと知る必要がありそうだ。
<取材・文/斉藤円華>
本土では報道されない「海保の暴力」
海保は「正当な警備」と反論
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