歯科医にまつわるトラブルを避けるために。知っておきたい予防策を紹介
昨年、悪徳歯科矯正医の被害に遭った女性の体験談を公開したところ、大きな反響があった。
この記事で紹介した被害者は、1年で終わると説明されていた歯科矯正が2年3ヶ月経っても半分しか終わっていなかった。しかも、その時点で支払った額は300万円近く。このケースは医師の治療に関する説明が不十分であったとして被害者は損害賠償を勝ち取ることができたが、訴訟提起から判決確定までに費やした時間は約4年間。歯科医にまつわるトラブルは、裁判費用に比して勝ち取れる額が少額であることから泣き寝入りも多いと言われる。どうすれば、このようなトラブルを防げるのだろうか。
今回は、国民生活センター相談情報部相談第2課の高橋捺紀さんと小石川矯正歯科クリニックの平出隆俊歯科医に歯科トラブルの一般的な傾向と予防法、またトラブル発生の構造的要因についてお話を聞いた。
――過去10年間の歯科医にまつわるトラブルの傾向について教えてください。
高橋:保険診療・自由診療含めて毎年3,000件前後で推移しています。各年代の比率は変わりませんが、相談者の男女比では男性が全体の約25%、女性が全体の約75%です。女性は40~60歳代からの相談が多く寄せられています 。
相談内容の多くは、歯科医に対する解約・返金請求です。理由は、治療開始時に説明がなかったにもかかわらず、費用の追加請求があった、治療方針が最初の説明と違っていて信頼できずに解約したいというものです。
矯正の場合だと1、2年で終わると言われていたのに結局終わっていなかったというものが多いです。施術の途中で、歯並びが悪くなってしまった、噛み合わせが悪くなったという不具合を訴えるケースもあります。
――国民生活センターとしてどのようなアドバイスをするのでしょうか?
高橋:例えば、解約、返金請求の場合、クリニック側と交渉するために必要な情報をお伝えして相談は終了となります。しかし、相談者がひとりでクリニックと交渉するのが難しいようであれば、センターが相談者とクリニックとの間に立って、代理ではなく‶あっせん″という形で、相談者の意思を確認しながらクリニックと交渉します。
消費者契約法上、事業者には契約内容を消費者にとって平易で明確なものになるよう配慮するという努力義務が課せられています。また、医療法等でも歯科医は治療内容やリスク等について適切な説明を行わなければならないという、いわゆるインフォームド・コンセントが義務付けられています。センターではこうした法令等に基づき「治療のリスクや代替的治療の有無などの説明が不足していたのではないか」などと交渉し、クリニックが説明不足などを認めて減額・返金に応ずるケースもあります。
ただ、慰謝料の請求などが視野に入ってくるような場合には、弁護士が必要になりますので国民生活センターや消費生活センターでは対応できません。トラブルの態様に応じて様々な対応をしています。
――トラブル防止のために必要なことはどのようなことなのでしょうか?
高橋:口コミや広告などを信用し過ぎずに、省庁など国の機関の公表物や歯科医師団体が出しているHPなどから信頼できる情報を集めることが大切です。そして、特に歯列矯正など長期間治療が必要な契約をする場合は、治療を始める前にどれくらいの費用と期間が掛かるのか、書面で見積もりを求めたり、治療中どのようなリスクがあるのかなどについてはっきり説明を受けることが大切です。
時間のある場合はいくつかクリニックを回ってみて、費用やリスク等について自分の納得のいく丁寧な説明をするクリニックを選んで欲しいですね。
第1回目で取り上げたようないわゆる悪徳医師についても相談のあった歯科医の公表はできないわけではないが、手続のハードルが高くて実現には至らず、消費者への注意喚起は手口の一般的な形に留まるという。また、歯科矯正は自由診療であり、保険点数で治療報酬が明瞭に把握しにくいことからトラブルになっているケースも多い。
では、このような歯科矯正のトラブルはなぜ起こってしまうのだろうか。歯科矯正医の実態を調査している小石川矯正歯科医の平出隆俊医師に話を聞いた。
解約・返金請求に関する相談が多い
時間があれば複数のクリニックを回って
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