パチンコ業界の高射幸性遊技機撤去。店舗側の断腸の思いと業界内の葛藤

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ナオ / PIXTA(ピクスタ)

業界に波紋を呼んだ、「ともえ町田」の組合員資格停止

 700店舗以上ある東京都のほぼ全てのパチンコ店が加盟する東京都遊技業協同組合(以下、都遊協)が11月16日、組合店舗である「パールショップともえ町田609」(東京都町田市、以下「ともえ町田」)の組合員資格停止を決定したと業界関係誌が一斉に報じている。  政府がコロナ禍による緊急事態宣言を発布した4月、都の営業自粛要請に応じなかったいくつかの店舗すら実質的には処罰することのなかった都遊協が、今回、一組合員の資格を停止した、一般メディアにも取り上げられないこのニュースは、果たしてパチンコ業界にとってどのような意味を持つのか。その内幕を探る。  「ともえ町田」に組合員資格停止処分が下されたのは、「組合活動に支障をきたし、またはきたす恐れのある行為を行った」ことが理由だ。  具体的には、パチンコ業界が推し進める高射幸性遊技機の撤去に応じなかったという問題である。  コロナ禍による国家公安員会規則の改正により、2020年5月20日以降に設置期限を迎える全ての旧規則遊技機(2018年2月の遊技機規則改正によりそれ以前の旧規則遊技機は順次撤去しなければならない)は、その期限が1年間延長された。  多くの部品を海外から調達する遊技機の製造が滞っていることや、遊技機の大量入替による人の接触機会を低減させることが目的であった。

パチンコ業界団体に単独、反旗を翻した「ともえ町田」

 しかし、14に及ぶパチンコ業界団体の統括的な役割を担う「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」(以下、21世紀会)では、国家公安委員会規則が定める設置期限よりも短い期限での撤去を促した。  特にギャンブル等依存症に影響を及ぼすとされる高射幸性遊技機は遅滞なく本来の設置期限をもって撤去するよう取り決めた。法的根拠は無い。あくまで業界の自主規制としてである。  21世紀会は、この取り決めをパチンコ店が遵守するよう、該当遊技機の撤去を約束させる「21世紀会誓約書」を作成し、全国のパチンコ店の99%以上がこの誓約書を提出している。  「ともえ町田」は、この誓約書を提出せず、また該当する高射幸性遊技機の撤去も行わなかった。これが組合員資格停止の理由の内幕である。
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それでも9割が高射幸性遊技機の撤去に応じる理由
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