サンリオが描く「予想の斜め上を行く」施策。“鮭の切り身のキャラ”まで登場
TwitterやVineなどのソーシャルメディアも積極的に活用するサンリオ。奇抜な設定のキャラクターをも登用しながら、子どもから大人まで幅広い層とのコミュニケーションをはかっている。その根底には背けば退職すら余儀なくされる「絶対」のルールがあるという。
サンリオの理念は「ソーシャルコミュニケーションビジネス」。人と人を結ぶお手伝いをするというもの。キャラクタービジネスは人と人とが贈り物をし合えるように、サンリオピューロランドは施設内でコミュニケーションできるようにと、人々へ交流の機会を提供するような事業を展開してきた。
このブランドイメージを傷つけるネガティブなものには、サンリオのキャラクターは使えない。辻信太郎社長の自著『これがサンリオの秘密です。』にはサンリオのタブーが書かれていた。
・ナイフやピストルといった人を傷つけるもの
・タバコ、お酒(ワイン、ビールなどのソフトリカーは除く)、ドラッグ関係
・大人の玩具など
確かに上に挙げた商品にはサンリオのキャラクターはそぐわない。同書は社員の素行についても言及している。「他人のものを盗むな」「暴力をふるうな」という2つは絶対のルール。背いた人は理由のいかんを問わず退職を余儀なくされる。
「サンリオの本質」に抵触するものは社内に存在してはならない。当然ながら企画も同様だ。社外の企業・団体に許諾を付与するライセンス事業においても「かわいい、仲良く、助け合い」の精神にのっとっていることが条件。「ピューロのうわさ100」も“うわさ”を100個決定するとき、ブランドイメージに反していないか各セクションの社員が1つ1つチェックをして決めていったという。
もちろん子ども向けのビジネスにも注力は続けている。2013年1月には入園・入学したばかりの幼児・児童を対象としたキャラクター「ぼんぼんりぼん」をリリース。ビジュアルはパステルカラーのうさぎが大きなリボンをつけたもので、「歌とダンスが好きなうさぎ」「お友達とバレエダンス教室に通う」といった現代の子どもから共感を得るための設定が奏功して支持を集めた。オーソドックスな文房具から児童向けのコスメまでラインアップを展開。同年のサンリオキャラの人気投票ではサンリオショップで多くのキッズ票を獲得し、100キャラクター中15位の結果を残した。
「食卓に寄り添うパートナーとして美味しく食べてもらうのを待っている」というシュールな設定をもつ鮭の切り身のキャラ「KIRIMIちゃん.」も、昨年8月に水産庁が子どもを対象に行った「子ども霞が関見学デー」に登場。写真撮影やグッズの配布など、子どもとのリアルなコミュニケーションにも力を注ぐ。
過激にも思えるユニークな企画の数々は、若者や大人の今の姿を注視した結果生まれた。一方で子どもやその保護者のほうを向いたビジネスもサンリオは忘れていない。各ターゲット層それぞれに向いた「ソーシャルコミュニケーションビジネス」を行っている。今後、サンリオはどんな形で世間を騒がせ、予想の斜め上を行く施策を実現するのか。既存のキャラクターの展開から、新機軸のキャラクターまで次なる一手はすでに動き出している。
<取材・文/黒木貴啓>
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