「鬼滅の刃」公式カップルから見る、最高の幸せを掴む方法
(本稿には最初からネタバレが含まれます。十分にご注意下さい。)
(架空のキャラクターをもとにした考察です。)
「鬼滅の刃」がもはや説明不要なレベルの大ヒットとなっている中、作品については「理想の上司」「リーダーシップ」など様々な角度で考察がされているが、本作品には見逃せない要素がもう一つある。
それが恋愛である。
中でも代表的なカップルが、甘露寺蜜璃(女性)と伊黒小芭内(男性)だ。二人はともに鬼殺隊の中でも最上位の階級「柱」であり、同僚以上恋人未満の関係として描かれている。
伊黒は鬼に自らの赤子を供物として捧げる代わりに栄華を誇る一族に生まれ、彼も生まれたと同時に鬼の餌となる運命であったが、女子しか生まれない家系に数百年ぶりに生まれた男子であり、珍しいオッドアイを持っていたことで鬼に気に入られ、運良く生き延びる。
そしてある程度体が成長したら食うという前提で地下牢に入れられ、そこから一歩も出られずに育つが、ある日牢を逃げ出して鬼に殺されかけたところを柱に助けられ、自らも鬼殺隊に入り頭角を表すようになる。
複雑性トラウマによる防衛規制(心の痛みに直面するのを避けるために作り出す数々の反応)が過剰に発達したのか、常に人を問い詰め追い込むようなネチネチとした口調で話すのが特徴だ。
一方、甘露寺蜜璃は円満な家庭に育ち、鬼からの被害体験もない。
誰彼かまわず胸キュンをしてしまう一見、恋多き女であり、色恋沙汰に疎い主人公の竈門炭治郎すらもドギマギさせる魅力の持ち主だ。現代風に言えば恋愛強者、天然のモテ女といったところ。さらに他者の長所だけに着目し分け隔てなく接する、善良な性格の持ち主でもある。
一見、正反対の性格である伊黒と甘露寺は普段文通をし、多忙の合間を縫ってはともに食事をする仲だが、それ以上の関係にはなかなか進展しない。
二人に経済格差はほぼない(鬼殺隊の頭領であり金銭的スポンサーである「産屋敷輝哉」が富豪であることから、柱に昇格すれば給料は言い値で無限に貰うことができる)と見られるが、それを除くと伊黒は仕事はできるが性格が気難しく、顔には鬼によって口を顎まで引き裂かれた傷跡が残る。腕力も乏しく、実家は前述の通り。結婚相手としては遠慮したい相手とみなされるであろう。
ではなぜ、この二人がお互いを思い合う関係になるのか? そこに、本作品の見どころが込められている。
甘露寺は一見、天真爛漫に見えるが、自身が当時のジェンダーロールから大きく逸脱していることが心に影を落としている。
筋肉量が常人の8倍もあり、食べる量も人の8倍、さらに桜餅を食べすぎて髪の毛の色が桜と葉色になってしまった特異体質の持ち主。そして身長も167㎝と、大正時代の男性の平均(160㎝)よりも大きく上回る。
そのせいで見合い相手からは「君と結婚できるのは熊か猪か牛くらい」「頭の色が子供に遺伝すると思うとゾッとする」と罵られ破談に。その後、髪の毛を黒く染め、普通の女性を装って婚活に励んでいたものの限界を迎え、より自分らしくいられる場所を求めて鬼殺隊に志願したのだった。
ここでまず一つのポイントは、甘露寺が勇気を持って環境を変えた点である。
「居場所」の心理的効果について各種研究では、居場所は自己受容感、本来感(本来の自分であるという感覚)、役割感(自身の存在理由に繋がる意識)、被受容感(受け入れられているという意識)などをもたらす。
よって、自分らしくいられる場所を探すことは、自己実現をする上で欠かせない要素となる。
PTSDの伊黒、無邪気で明るい甘露寺が交際に至る意味とは
自分らしくいられる場所を求め、鬼殺隊に入った甘露寺
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