保守的な宗教観、極右政権下で「フェミニスト」として戦うということ。ポーランド女性に聞いてみた

「伝統」は「親の言うこと」の言い換え?

 キリスト教、特にカトリックの影響力が政治と強く結びついたポーランドでは、中絶禁止法案にせよ、より幅広い女性の権利についても、宗教を抜きにしては語れない。しかし、こうした意見がある一方で、次のような声もあがった。  「正直、特にデモには興味を持っていませんし、私の周りでは女性同士でもあまり日常的にはフェミニズムについて話しません。今回のデモでは、政府や教会が結びついているということと、中絶という特定のテーマがあったから盛り上がったのだと思います。ただ、女性の稼ぎのほうが低いといった格差はあると思います。  また、職場でも女性が話すと真面目に取り合ってくれなかったり、『女性に言われたくない』といった事態に遭遇することもあります。こうした問題は、宗教が関連しているのかもわかりません。ただ自分の親がそうだったからという。それを伝統と言うのかもしれませんが」(Sさん・30代)  宗教だけでなく、家庭環境も大きく影響するというのは日本にいる我々にも他人事ではない話だ。  「現政権が女性はどうでもいいと思っているのは明らかです。何かコンプレックスがあるのか、女性たちと意思疎通ができていないので、デモが起きたりするのは当然ですよね。女性同士の世代間ギャップについては、あまり母とは女性の権利やフェミニズムについて話したことはありません。おばあちゃんは信心深くて、『ラディオ・マリア』(保守的なことで知られるカトリック向けのラジオ局)が大好きなので察してください(笑)。伝統的な価値観が染みついていて、旦那が何か手伝ってくれるのを見るだけでショックを受けています。『やけに手伝うのは離婚したがっている前兆だ』と(笑)」

女性の権利と政治は別問題

 では、同国の男性たちの姿勢については、どう感じているのだろう?  「体感としてはデモについても、フェミニズムについても、賛否は半々といった感じです。旦那や父はデモも支援していましたが、それは反政権だからという面も強いと思います。女性の権利についての問題と、政治がごっちゃになっているんじゃないかと。ただ、友達を見ていても、より多くの男性が支援にまわっているような気がします」  また、日本の女性については、前出のAさんとはだいぶ違った印象を持っていた。  「女性は仕事をしないで旦那の帰りを待っている男性は帰ったらビールとメシ……そんなイメージです。女性の権利や生活が充実しているようには思えません」  日本人女性がポーランド人女性にあまり明確なイメージを持っていないように、日本についての印象はまちまちなようだ。
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メディアが歪める「フェミニスト」像も分断の一因
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