政令指定都市から特別区への“格下げ”となる都構想のデメリットに、大阪市民も気づいてきた

政令指定都市から特別区になることは、事実上の“格下げ”

告示日(10月12日)の維新と公明の合同街宣

告示日(10月12日)の、維新と公明の合同街宣

「大阪都構想」の住民投票が10月12日に告示された。11月1日の投開票で賛成が上回れば、2025年に政令市が初めて廃止され、4特別区に移行。「二重行政解消」を訴えてきた維新の目玉政策であることから、次期衆院選はもちろん、蜜月関係にある菅首相の政権運営も大きな影響を与えると見られている。  賛成派の維新と公明両党は、難波駅前で合同街宣。維新副代表の吉村洋文・大阪府知事と共にマイクを握った維新代表の松井一郎・大阪市長は「市民にとってのマイナスは府と市が対立すること」と切り出し、維新府政と市政がスタートした2011年以降、知事と市長が連携する“バーチャル(仮想)都構想”で二重行政が解消、大阪は成長してきたと強調。これを制度的に定着させるために「都構想(住民投票)で二重行政を根本から断ち切る」と訴えた。  当初は、吉村知事の人気と公明党が賛成に転じたことで「維新の勝利は確実」とみられ、ABCテレビの9月19・20日の世論調査でも「13.8ポイント差」(賛成49.1%、反対35.3%)と大きくリード。しかし反対派が急速に追い上げて10月10・11日には「3.1ポイント差」(賛成42.3%、反対45.4%)の僅差になっている。しかも投票率が低い30代以下に賛成が多いことから、実質的にはすでに横一線状態であるのは確実だ。  地元記者は「都構想の実態、特にマイナス面が次第に知られるようになったためだろう」と分析する。 「政令指定都市の大阪市が4つの特別区になることは、固定資産税などの財源や消防などの権限を失う事実上の“格下げ”です。橋下徹・元大阪府知事(当時)が『大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る』と発言、れいわ新選組の山本太郎代表が『大阪市消滅で2000億円が大阪府にカツアゲされる』と訴えているのはこのためです。  しかも市役所が4分割されるのに伴って464億円の初期費用がかかります。借家暮らしの4人家族が一人ずつ住むようになれば、新たな家財道具の購入が必要で家賃総額も増えてしまうのと似ています。  こうしたデメリットが、これまでは維新の圧倒的な広報宣伝活動でかき消され気味でしたが、反対派の草の根的な運動で徐々に浸透しつつあるようです」

政令指定都市廃止のデメリットは災害対応にも

立憲民主党の枝野幸男代表も大阪市内で街宣

立憲民主党の枝野幸男代表も大阪市内で街宣

 実際、反対派はここを攻め所に街宣をしていた。立憲民主党の枝野幸男代表は9月21日に天王寺駅前で、「私の地元・埼玉では何とか政令指定都市になりたくて、大宮と浦和が歴史ある名を捨てても合併した」と、他地域と逆行する都構想の特異性を指摘。「全国の政令市の現状をよく見極めて」と呼びかけていた。  防災の専門家の河田恵昭・関西大学社会安全研究センター長・特命教授も、政令指定都市のメリットとして災害復興をあげていた。10月4日のれいわ新選組のゲリラ街宣でマイクを握り、大阪都構想よりも南海地震の津波対策(市内が水没)を優先すべきと訴えた時のことだ。 「25年前の阪神淡路大震災が起こった時に神戸市が復興できたのは、政令都市だったからです。9年前の東日本大震災で仙台が復興したのも政令指定都市だったためです。(格下の)中核都市ではダメなのです」 
関西大学の河田恵昭・特命教授

災害復興における政令指定都市のメリットを語る一方、都構想(政令指定都市廃止)よりも南海地震の津波対策を優先するべきとも訴える関西大学の河田恵昭・特命教授

 なお河田氏は告示日の自民党反対集会でも、「大阪都構想のような未熟な案を通してしまうと、次、南海地震が起こると大阪市は壊滅する」と警告。菅首相の官房長官時代の楽観的発言も暴露した。 「(南海地震の津波被害について官房長官時代の菅氏に)『どうしていただけるのですか』と言ったら、こう言ったのです。『先生、来ないでしょう』と。そんなことで政治家は困るのです。もっと将来を見通さないといけない」  都構想実現(=政令指定都市廃止)が“目玉政策”の維新も蜜月関係にある菅首相も、「南海地震の津波対策不足への危機感が乏しい」と河田氏は指摘。「防災」も住民投票の一つの争点になっていたのだ。
れいわ新選組の山本太郎代表

れいわ新選組の山本太郎代表も大石晃子予定候補(大阪4区)とともにマイクを握り、都構想の謳い文句「大阪の成長を止めるな!」が虚偽情報であることをデータをもとに説明

 一方、賛成派は「政令指定都市廃止のデメリットよりも、府と市の二重行政解消によるメリットが上回る」と強調しているが、この信憑性についても反対派は疑問視している。都構想のキャッチフレーズは「大阪の成長を止めるな」だが、山本代表とゲリラ街宣をした元大阪府職員の大石晃子予定候補はこう語る。 「大阪は全国平均と比べても他都市と比べても、成長していないし、(消費は)低迷しています」(筆者記事「『大阪の低迷を止めろ』。れいわ新選組・山本太郎代表が『大阪都構想』住民投票に対してゲリラ街宣」参照)
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維新の府市一体行政は、経済成長率で全国平均を大きく下回る
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仮面 虚飾の女帝・小池百合子

都民のためでも、国民のためでもない、すべては「自分ファースト」だ